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2017.04.10 公職選挙法

第3回 収入・報酬・実費弁償・弁当・飲食物の提供等

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Bパターン及びCパターン
 実費弁償が認められる費目の種類はAパターンと同じです。
 上限額についての定めはありませんが、報酬の場合と同様、社会通念上相当と認められないような額の実費弁償は買収とみなされるおそれがあります。

(6)弁当の提供(公選法139条)
 弁当の提供については、Aパターンについてだけ①選挙運動員、②労務者いずれについても認められます。
 ただし、期間、上限額、数量その他の制限があります。

〈期間〉
 弁当が提供できる期間は、その選挙の選挙運動期間中、すなわち立候補の届出後から投票日の前日までです。

〈上限額〉
 1食当たり1,000円かつ1日当たり3,000円までの範囲内で、その選挙を管理する選挙管理委員会が定めた額となります(公選法施行令109条の2、公選法197条の2第1項、公選法施行令129条1項1号ホ)。事前に選挙管理委員会に確認しましょう。

〈数量〉
 候補者1人につき、
  基本数(45食)×選挙の公示又は告示日から投票日前日までの日数
ですが、選挙事務所が公選法131条1項に基づいて2か所以上設置できる場合は、1か所当たり18食を基本数に加えて算出します(なお、地方公共団体の議会議員選挙及び市町村長選挙は1か所しか設置できません(同項5号))。
※総数だけが決まっており、これを守る限り、どのように数を分配するかは自由です。朝食・昼食に集中して提供することもできますし、選挙戦終盤にまとめて提供することも可能です。

〈その他の規制〉
・弁当の提供は、①選挙運動員、②労務者に対してのみであり、たまたまやって来た有権者に提供したり、激励に来ただけの人に提供することは許されません。
・弁当の提供は候補者個人についてのみ認められ、政党が提供することは認められていません。
・条文上、「選挙事務所において食事するために提供する弁当」と「選挙運動に従事する者及び選挙運動のために使用する労務者が携行するために提供された弁当」についてのみ提供できるとしていますので、選挙事務所の外で提供したり、事務所で提供する弁当を事務所外の現場へ届けることは許されません。
・選挙運動員に弁当を提供した場合、その者に対する当日1日の弁当料の実費弁償の範囲は、限度額から提供された弁当の実費額を差し引いた金額に限られます(公選法施行令129条2項)。
・労務者に弁当を提供した場合、その労務者に対する報酬は、弁当の実費額を差し引いた金額しか支払うことができません(同項)。

【事例の検討】
 以下の事例は認められるでしょうか(なお、支払上限は公選法施行令どおりであると仮定します)。
オ 県会議員選挙において、候補者Aが、選挙管理委員会に報酬支払を届け出たウグイスBに対し、報酬として1万5,000円と概算交通費として1,000円(実費の額は960円)を渡した。
カ 立候補の届出をした翌日に選挙管理委員会に報酬支払を届け出たウグイスBに、立候補日の報酬を支払った。
キ 待機中のウグイスBに電話作戦を手伝ってもらった。
ク 荷物の運搬をさせていた労務者D(報酬なし)に桃太郎での声かけをさせた。
ケ 候補者Aは選挙期間中、延べ50人の異なる車上等運動員及び事務員を、報酬を支払う者として届け出て報酬を支払った。
コ 候補者Aは選挙期間中のある1日に、10人の事務員と3人の選挙カー運転手に対して報酬を支払った。
サ 選挙カーに乗って地域を回っているウグイスBと運転手Cに弁当を届けた。
シ 弁当を持たせて選挙カーを運転させた運転手Cに報酬日額どおりの報酬を支払った。

 オの場合、ウグイスBに報酬を支払うことは金額の点でも問題ありません。しかし、実費弁償としての交通費が概算であり実費額を超えている点で問題があります。実費超過部分は上限を超えた報酬となり違法となります。
 カは、事前の届出を義務づける公選法197条の2第5項の規定に抵触し、違法な支払となります。届出以前についての報酬を支払うことはできません。
 キの電話作戦は、有権者に直接働きかけて投票を依頼する行為で選挙運動となります。そのためウグイスBが行った電話作戦に対して報酬を支払うことはできません。なお、Bの車上等運動員としての労務の対価のみ分離して報酬を支払うということは実際上区別が困難であり、「専ら」という車上等運動員の定義にも反することになるため認められないと考えます。
 クは、Dが労務者として労務に就いていたとしても、声かけという選挙運動をすれば、もはや単なる労務者といえず、選挙運動員となります。そのため報酬を支払うことはできませんが、本件の場合もともと無報酬のため問題はありません。
 ケについては、Aは県会議員選挙に出馬しているところ、同選挙では1日当たりの4業務への支払人数限度は12人であり、報酬を支払う届出はその5倍の60人までできます(公選法197条の2第2項、公選法施行令129条3項、7項)。ですから、延べ50人に報酬を支払うことは可能です。もっとも、1日当たりの限度(12人)を超えることは許されませんので、注意が必要です。
 コの場合、ケで述べた1日の支払人数限度である12人を超えるようにも思えます。しかし、人数制限は4業務についてのみであり、労務者は含まれませんので、本件は認められます。
 サについて、弁当の提供は「選挙事務所において食事するために提供する弁当」と「選挙運動に従事する者及び選挙運動のために使用する労務者が携行するために提供された弁当」についてのみですので、外出先に届けることは認められません。出発前に弁当を渡しておきましょう。
 シですが、運転手Cは労務者に当たり、弁当を提供した場合、その実費を報酬から差し引かねばなりません。そのため、弁当を提供したにもかかわらず弁当実費を差し引かずに報酬日額どおり支払うことは許されません(公選法施行令129条2項)。

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