2017.04.10 公職選挙法
第3回 収入・報酬・実費弁償・弁当・飲食物の提供等
(4)報酬支払の内容・範囲
Aパターン
〈内容〉
公選法197条の2第1項、2項、公職選挙法施行令(以下「公選法施行令」といいます)129条1項、3項、4項は、報酬の額について、以下、それぞれの項で説明する金額の範囲内で選挙管理委員会が定める額としています。選挙管理委員会が定める額については、選挙前に問い合わせて確認しましょう。
「報酬」とは労務の対価ですので、労務がない場合には当然支払うことはできません。
① 4業務
・これは上限であり、一般に8時間労働に対しての報酬と考えられていますが、仮にそれ以上の労務に就いたとしても、残業等の超過勤務手当などを出すことはできませんので注意が必要です。
・報酬を支払うためには、事前に選挙管理委員会に届け出る必要があります(公選法197条の2第5項)。この届出がない場合、又は届出前の部分についての報酬支払はできません。届け出ることのできる人数の限界は、後述の1日当たり支払うことのできる人数の5倍以内となります(公選法施行令129条7項、3項)。
② 労務者
・①と異なり、労務者に対しては超過勤務手当を支払うことができます。
〈範囲〉
支払ができるのは、立候補の届出がされてから投票日の前日までであり、さらに①の4業務については事前の届出が必須です。また、以下のとおり選挙の種類ごとに1日当たりの人数制限があります(公選法197条の2第2項、5項、公選法施行令129条3項)。
1日当たりの支払限度人数
・衆議院小選挙区選出議員選挙、参議院議員選挙、都道府県知事選挙:50人
・指定都市の市長選挙:34人
・都道府県議会議員選挙、指定都市の市議会議員選挙、指定都市以外の市長選挙:12人
・指定都市以外の市議会議員選挙、町村長選挙:9人
・町村議会議員選挙:7人
Bパターン
支払える対象者の範囲はAパターンと同じです。
しかし、内容については少し異なるところがあります(公選法197条の2第3項、4項、公選法施行令129条5項、6項)。
・4業務に対する上限額は以下のとおりですが、Aパターンと異なり、選挙管理委員会が定める額ではありません。
・選挙運動員に対する報酬支払に当たっては、Aパターンで必要とされていた選挙管理委員会への届出は不要です。
・労務者に対する報酬の上限額の定めはありません。もっとも、社会通念上相当とはいえない高額の支給をした場合は買収とみなされるおそれがあります。
Cパターン
Cパターンでは、公選法上、選挙運動員に対する報酬支払の規定はなく、支払の対象者の範囲が労務者のみとなります。
また、労務者に対する報酬の上限額もありません(もっとも、社会通念上相当な額であることが必要なのは、Bパターンと同じです)。
(5)実費弁償について
実費弁償については、A、B、Cいずれのパターンでも、①選挙運動員(報酬支払が認められない人も含む)、②労務者ともに認められます(公選法197条の2第1項)。
ただし、支給できる費目の種類に違いがあります(公選法施行令129条1項)。
Aパターン
以下の基準に基づき、その選挙を管理する選挙管理委員会が定めた上限額の範囲で実費弁償が認められます。必ずしも下記の基準がその選挙での上限とは限りませんので、選挙の際には選挙管理委員会に確認しましょう。
① 選挙運動員への実費弁償
② 労務者の限度額
・いずれも実費額が基準となりますので、限度額内であっても実費額までしか出せません。実費がないのに支払ったり、実費額を超えて支払った場合、買収とみなされるおそれがあります。
・弁当料は1食当たりと1日当たりの両方の基準を満たす必要があります。例えば、朝食600円、昼食1,200円の実費とした場合、昼食代は200円が自己負担、夕食で出せるのは1,000円までの実費額ということになります。なお、基準を満たす限り、食事回数は3回を超えても構いません。
・①選挙運動員に対する宿泊料は2食を含んでいますので、その部分について別途弁当料を支払うことはできません。他方で②労務者の宿泊料には食費は含まれませんので、食事は自己負担となります。