2017.04.10 公職選挙法
第3回 収入・報酬・実費弁償・弁当・飲食物の提供等
3 報酬・実費弁償・弁当の提供について
選挙運動について、原則として無償とし、一定の場合にのみ、一定の範囲で報酬・実費弁償を認め(公選法197条の2)、弁当の提供についても制限をかけています(同法139条)。これらは、一歩間違えれば買収とみなされるおそれもあり、特に注意が必要となります。
上記の「一定の場合」、「一定の範囲」が何を指すのかは、選挙の種類や選挙運動に関わる者の区分によって決まっていますので、まずはこの点を整理しておきます。
(1)報酬・実費弁償が認められている3つのパターン
公選法上、報酬・実費弁償が認められているのは、以下のパターンに当てはまる場合と定められています(公選法197条の2)。
以下では、これらのパターンごとに解説を行います。
(2)選挙運動に関わる人の種類
選挙運動に関わる人は、選挙運動そのものに関わる選挙運動員、ウグイスや選挙カーの運転手、さらには選挙事務所で事務を行う人や荷物運びなどの単純作業に関わる人など様々です。
これを公選法で使用されている文言をもとに分類すると、次の2種類に区別できます。
(3)報酬支払が可能なのは?
公選法上報酬を支払うことができるのは、以下の種類に属する人に限られます(ただし、後述のとおりCパターンについては範囲がさらに限定されます)。
① 選挙運動員のうち、車上等運動員、手話通訳者、要約筆記者、事務員(以下「4業務」といいます)
・車上等運動員は、専ら選挙カーや船の上で連呼行為等をするために雇われた者をいいますが、停止中に一時的に車・船の周囲で演説などをする程度は許されます。
・手話通訳者、要約筆記者も条文上「専ら」とされていますので、その他の職務に就かせることはできません。
・事務員は、選挙運動のために雇われ、使用される関係にある者をいいます。そのため、選挙運動の立案や中心を担う者や使用される関係にない者が事務を行う場合は含まれません。また、選挙運動に関する事務に従事する者をいうので、有権者に働きかけるような行為はできません。
② 労務者
・労務者の定義については最高裁の判例があります。最高裁第1小法廷昭和53年1月26日判決(刑集32巻1号1頁)は、「選挙民に対し直接に投票を勧誘する行為又は自らの判断に基づいて積極的に投票を得又は得させるために直接、間接に必要、有利なことをするような行為、すなわち公職選挙法にいう選挙運動を行うことなく、専らそれ以外の労務に従事する者をさす」と判示しました。そのため、選挙運動に関わることをすることはできません。
したがって、選挙活動の実働部隊(街頭でのビラ配り、電話かけ、桃太郎の随行など)となる協力者に対しては報酬を支払うことができないこと、ボランティアとなることは絶対に銘記すべきです。
また、報酬を支払うことができる人であっても、その人が選挙運動を行うと支払うことができなくなります。例えば、電話作戦の手が足りないからといって事務員やウグイスに電話かけをお願いしたり、荷物の運搬をする人に街頭での手振りをさせたりすると、選挙運動になるため、報酬を支払うと公選法違反となります。したがって、報酬を支払う対象者には、手が空いていても本来の業務以外のことはさせないようにしましょう。