2017.03.10 公職選挙法
第2回 政治活動における寄附の禁止該当事例
4 有権者・後援者側から見る寄附の制限
(1)有権者個人からの寄附
○政党・政治資金団体や政治団体に対しては制限額(注)以内であれば可。
○公職の候補者に対しては金銭等以外だけが可能(規正法21条の2)。
(注)制限額
・対政党・政治資金団体への寄附:年間2,000万円
・対その他の政治団体・選挙運動に関して公職の候補者等への寄附:同一の相手へ年間150万円かつ総額1,000万円
○選挙運動に関する場合は金銭等による寄附も可(規正法21条の2)。
○寄附者が、公職の候補者等の(立候補する)議会又は長の選挙に関し、その国又は地方公共団体と特別の利益を伴う契約の当事者である場合は、その選挙に関しては、寄附はできません(公選法199条1項)。
・「特別の利益を伴う契約」とは、条文にある請負のみならず、施設利用や運送、物品納入など幅広く含まれ、利益の割合が多い契約や独占的・特権的な利益があるような契約などをいいます。
○本人名義以外や匿名での寄附はできません(規正法22条の6第1項)。ただし、街頭又は一般に公開される演説会若しくは集会の会場での、政党又は政治資金団体に対する1,000円以下の寄附はできます(同条2項)。
【事例の検討】
ス D県会議員Aさんの支援者であるCさんが以下の行為をした。
① Aさんに日頃の御礼にと1万円を事務所に持ってきた。
② Aさんの後援会である政治団体Bの年会費(500円)といって1,000円を払ってきた。
③ D県から県の財産について無償の払下げを受けていたところ、県会議員選挙直前にBへ寄附をした。
④ ③の際に、同時にBに年会費として500円を支払った。
セ Aさんの街頭演説を聞いていた通行人が、Aさんに「頑張ってね」と名乗らず千円札を渡してきた。
ス①は、選挙に関しての場合を除き、Aさんに対する金銭等の寄附はできません。政党や政治団体への寄附であれば受け取ることができます。
②のうち、本来の年会費部分は定められた義務の履行であり、そもそも寄附に当たりません。しかし超過部分については寄附となります。
③の場合、CさんはD県と「特別の利益を伴う契約」の当事者となるため、当該選挙に関しては寄附ができません。寄附が行われたのが選挙直後であっても、寄附の約束が選挙前にされていれば「その選挙に関し」てのものとされる可能性が高いです。
④の場合は定められた会費の支払であり、義務の履行として寄附に該当しません。
セの事例は匿名での寄附です。匿名での寄附は原則禁止ですが、解説の例外に当たり許されます。ただし、Aさんに対する寄附の場合、現金の提供が許されるのは選挙運動に関する場合のみなので、一般的な政治活動に対するものは許されません。政党や政治団体に対する寄附として受け付けるしかないと思われます。