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2017.02.27 仕事術

第24回【最終回】 議会は考える機関。考えるために視察に行く

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一般財団法人地域開発研究所 牧瀬稔

 本連載の影響(?)かは分からないが、筆者のもとへの視察が増えている。先日も河南町議会(大阪府)の議会運営委員会が視察に訪れた(議員7名、事務局職員1名)。テーマは議会基本条例を含む議会改革についてであった(それに加え、脱線的な話として、地方自治体のプロモーション活動に関しても意見交換を行った)。
 今回は事前に質問内容が提示されていたため、筆者の見解をまとめることができた。事前に質問内容をいただけると、論点が明確になり準備もできるため、視察を受け入れる側にとって、とてもありがたいことである。また、今回視察にいらした議員は、筆者の著書も読まれており、その著書に関する疑問を筆者に確認するなど、とても有意義(ある意味、模範的)な視察であったと思う。
 視察を実施する側(今回は河南町議会)、視察に対応する側(今回は筆者)の双方が満足する視察が「いい視察」である。視察にいらした河南町議会議員の皆さんが満足したかどうかは筆者には分からない。しかし、筆者は大いに満足した。様々な意見交換ができたため、筆者にとっても、今後の政策づくりに生かせる多くの知見が得られた。
 さて、今回が本連載「らくらく視察力アップ講座」の最終回である。過去の連載と重複する部分があるかもしれないが、再度、議会の視察の意義や視察の効果的な生かし方を記したい。

議会視察(議員視察)の目的

 本連載で何度か指摘してきたが、視察は「手段」である。決して目的ではない。たまに視察を目的化している場合があるため注意しなくてはいけない。
 議員は視察の成果を活用することにより、議会の役割を果たさなくてはいけない。議会の役割とは、一般的には、①行政監視機能と②政策立案機能の2点に集約される。この観点から「視察の成果をどちらの機能を高めるために活用するのか」、あるいは「視察の成果を双方の機能を強化するために活用するのか」を明確にする必要がある。これらの意識付けを事前にしっかり行ってから、視察の設計(視察先の選定や質問事項の検討等)に取り組んだ方が効率的だろう。
 さらにいうと、行政監視機能や政策立案機能の強化も目的ではない。やはり手段である。議会は両機能を強化することで、最終的に「住民の福祉の増進」を実現していくことが本分と考えられる。地方自治法に、議会を含んだ地方自治体のよりどころが明記されている。それは1条の2である。同条には「地方公共団体は、住民の福祉の増進を図ることを基本として、地域における行政を自主的かつ総合的に実施する役割を広く担うものとする」とある。つまり、議会活動や議員活動の最終目的は「住民の福祉の増進を図ること」に集約される。
 この観点から考えると、視察の意義は次のように整理できる。議員は、①住民の福祉を増進するために、積極的に視察を実施して、様々な知見を得る。そして、②得られた知見を活用することで、行政監視機能や政策立案機能を強化するように努めていく。さらに、③議会としての行政監視機能や政策立案機能を強化することで、最終的な目的である住民の福祉の増進を目指していく。このように視察の持つ意味をしっかりと捉えなくてはいけないだろう。
 例えば、「視察をした結果として住民の福祉が増進した……」というのでは、やや効率が悪いだろう。そうではなくて、「住民の福祉が増進するように視察を進めていく」という発想が求められる。この「住民の福祉の増進」は重要なキーワードである。しかし、忘れている自治体議員や職員が意外に多い。それではいけないと思われる。
 話はそれるが、しばしば議会の役割として行政監視機能と政策立案機能があるといわれる(本稿もそれを前提として執筆している)。そして一部には「地方自治法に明記されている」と指摘する者もいる。しかし、地方自治法に「議会は行政監視機能と政策立案機能が必要」とは明文化されていない。例えば、地方自治法「第2編第6章 議会」を確認しても、「議会は行政監視機能が必要」とか「議会は政策立案機能が必要」とは書かれていない。
 地方自治法を読んでいくと、実は、ある主体は「政策が必要」と明記されている。読者は、この主体は誰だと思うだろうか? 長だろうか。自治体職員だろうか。あるいは、行政委員会か。政策が必要とされているのは、実は副知事と副市町村長、総合区長のみである。
 地方自治法167条には「副知事及び副市町村長は、普通地方公共団体の長を補佐し、普通地方公共団体の長の命を受け政策及び企画をつかさどり……」と明記されている。また252条の20の2第8項には「総合区長は、総合区の区域に係る政策及び企画をつかさどるほか……」とある。すなわち地方自治法が想定している政策が必要な主体は、副知事と副市町村長、総合区長に限定されているのである。
 筆者の個人的な見解になるが、きっと長に求められるのは政策力ではなく、胆力や決断力であると考えられる。胆力には「恐れたり、尻込みしたりしない精神力」という意味がある。政治家である長には、何事も恐れず決断していくことが求められる。一方、事務方のトップである副知事や副市町村長には、政策力を求めるようにしたと、筆者は考えている。
 議会の行政監視機能についても、政策立案機能と同様のことがいえる。ただし、地方自治法の行間をよく読んでいくと、何となく議会には行政監視機能と政策立案機能が求められているようにも捉えることができる。そこで筆者は、「一般的には、議会は行政監視機能と政策立案機能が必要である」と、必ず「一般的には」という言葉を用いている。
 話を戻そう。繰り返しになるが、議会が行政監視機能と政策立案機能の強化を実施することは「手段」である。住民の福祉の増進こそが「目的」である。この手段と目的を履き違えてはいけないだろう。そして、行政監視機能と政策立案機能を強化するために視察を実施するのである。

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