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2017.01.25 仕事術

第23回 調査研究の視点(2)

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統計データ分析調査

 統計データ分析調査は、既存の統計データを収集し解析することにより、何かしら新しい知見を導出することを目的とする。調査研究において頻繁に使われる手法である。
 既存の統計データを見る視点は大きく2つある。第1に、複数のデータを比較することである。例えば、新宿区(東京都)の刑法犯認知件数を分析するとき、新宿区と人口が同規模の他の地方自治体を比較することにより、同区の特徴を明らかにすることができる(新宿区を例示したのは深い意味はない。筆者がアドバイザーとして関わっているからである)。
 第2に、時系列データからトレンドを見ることである。新宿区だけに焦点を絞り、過去から現在にかけて刑法犯認知件数を把握していく。その過程の中で、特徴的な数字がある場合は、その数字に着目して理由を考える。
 第1の複数のデータを比較する際の注意点は、「サイズをそろえないと正しい比較にはならない」ということである。つまり、データ数値を単位当たりに直す必要がある。単位当たりというのは、「人口1万人当たり」や「人口1,000人当たり」にデータ数値を加工してそろえることである。
 図2は、警察庁が発表した2014年の交通事故死者数である。これを見ると、千葉県が最も多くなっている。その理由は、千葉県の県民が危険な運転をしているからではない。単に人口が多いからである(東京都の方が人口は多いが、公共交通機関が発達しているため、車に乗る時間が相対的に少ないと考えられ、その結果、交通事故死者数が千葉県と比較して少ないと推察される)。そのため図2のグラフだけでは、本当の姿は把握できない。

図2 交通事故死者数(2014年)図2 交通事故死者数(2014年)

 図3は、2014年の人口10万人当たりの交通事故死者数である。図3の結果を見ると、栃木県が5.2人と多くなっている。この観点から捉えると、交通安全に関して注意すべき都道府県は栃木県かもしれない。

図3 人口10万人当たりの交通事故死者数(2014年)図3 人口10万人当たりの交通事故死者数(2014年)

 しばしば全国平均を報じるマスコミ報道がある。しかし、これはあまり意味を持たない。東京都の人口は約1,360万人もいるため、全体の平均値を引き上げてしまうからである(東京都は都道府県というレベルではなく国レベルの規模の人口である)。一方で鳥取県の人口は約57万人である。東京都と鳥取県が比較できないように、都道府県の平均を出しても、意味はないだろう。
 余談だが、最近の新聞報道によると、2016年の全国の交通事故死者数は、前年から213人減って3,904人となった。4,000人を下回ったのは1949年以来、67年ぶりとのことである。一見すると、交通安全が確実に実施されている印象を持つ。しかし、厚生労働省が発表する交通事故死者数も含めて考えなくてはいけない(2017年1月1日時点では、まだ発表されていないようである)。
 交通事故死者数は、警察庁と厚生労働省の発表とで違いが生じている。その理由は、定義が異なるからである。警察庁の数字は「交通事故によって発生から24時間以内に死亡した者」の数である。一方で厚生労働省は「当該年に死亡した者のうち、原死因が交通事故による者(交通事故後1年を超えて死亡した者及び後遺症により死亡した者を除く)」として集計されている。さらに付言すると、警察庁は「総人口」が対象で在日外国人を含むが、厚生労働省の「人口動態統計」は「日本における日本人」が対象になっている。
 ここからいえることは、統計データを把握するときは、その数字の「定義」も押さえなくてはいけないということである。

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