2017.01.25 仕事術
第23回 調査研究の視点(2)
アンケート調査の手段
アンケート調査を実施する前に、最低限押さえておかなくてはならない事項がいくつかあるが、ここではアンケート調査の手段を紹介したい。アンケート調査と聞くと、郵送による調査を思い浮かべる読者が多いかもしれない。この調査を郵送調査法という。これ以外にも様々な手段がある。以下、簡単に説明する。
①郵送調査法は、アンケート調査票を対象者に郵送し、対象者に記入後返送してもらう方法である。人手を多く必要としないため費用が少なくてすむ。しかし、回収率が低い傾向がある。回収率を高めるため、回答者への謝礼や督促状(中間報告)の送付などが必要となってくる。筆者の経験では、切手を貼った返信用封筒を同封しておくと、回収率が向上する傾向がある。
②訪問面接法とは、調査対象者を直接訪問して、インタビュー形式で行うものである。回答者(調査対象者)に直接会えるため、回収率が高く、誤回答も少なくデータの信頼性が高い点が特徴である。この調査法を進める上で重要なポイントは、事前に調査員たちに研修を実施して、統一した説明ができるようにレベルを合わせておくことである。この調査法のデメリットのひとつとして、調査員たちに支払う費用がかかる点が挙げられる。調査研究を進めるに当たり、一番費用がかかるのは人件費である。
③留置調査法とは、対象者に調査票を配布し、数日後に調査員が回収して回る方法である。対象者に直接会う必要はないため、(訪問面接法と比較して)労力はそれほどかからない。対象者が不在の場合は、アンケート調査票を置いてくる。回答するのに時間を要するアンケート調査のときに有効である。
④街頭調査法とは、調査員が街頭で対象者を見つけて、インタビュー形式で質問に答えてもらう方法である。この場合も訪問面接法と同様に、事前に調査員たちに研修をして、統一した説明ができるようにレベルを合わせておくことが大切である。この調査法は、実施する日(平日か休日か)や時間帯、天候も検討する必要がある。また、インタビューに応じてくれる人を見つけることが意外と難しい。そのため、数多く対象者に当たらなくてはいけない。加えて、実施日時や天候などにより影響を受けるため、回答に偏りが生じやすいという欠点もある。
⑤電話調査法は、対象者に電話で質問し、答えてもらう方法である。回収率を高めるためには、質問数を少なくして、相手に時間をとらせないようにすることがポイントである。この調査法も、回答してくれる人を見つけることが難しい。また、固定電話で調査を実施した場合は、若い世代の意見が抜け落ちてしまう(若い世代の多くは固定電話を所有していないため)。その結果、調査結果にバイアスがかかる可能性がある。
⑥集合調査法は、対象者をある会場に集めて、その場で質問に答えてもらう方法である。一度に多数の調査票を回収できるというメリットがある。他方、会場確保や集合時間と場所の連絡といった事前準備に人手がかかってしまうデメリットがある。また、わざわざ時間をつくってきてもらうため、何らかの謝礼をする必要があるだろう。その結果、調査費用が多くかかる傾向がある。
最後に、⑦電子メールやインターネットを利用した調査法も紹介する。電子メールでアンケート調査票を送付し回収したり、ホームページで質問し電子メールで回答してもらったり、ホームページに直接書き込んでもらったりする方法である。回答結果をパソコンで入力する手間が大幅に軽減できる。しかし、ホームページを見ることができる人だけが回答することになり、回答結果に偏りが生じる可能性がある。
ここまで掲げたアンケート調査の手段にはそれぞれ一長一短がある。調査にかけることができる人員や費用等により、最適なものを選択するとよいだろう。