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2017.01.25 仕事術

第23回 調査研究の視点(2)

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一般財団法人地域開発研究所 牧瀬稔

 前回は、調査研究の手法として、定性的調査の手法を紹介した(あくまでも筆者がこれまで経験的に学び得た手法である)。視察は、原則的に定性的調査の範疇(はんちゅう)に入る。定性的調査とは、対象の質に着目する調査であり、質的調査ともいわれる。質的調査は、対象者の発言や文献調査など、数値や数量では把握することが難しい要素を確認することが主眼である。
 一方で調査研究の手法には、定量的調査もある。定量的調査とは、対象の量的な側面に注目し、数値を用いた記述や分析を伴う調査である。同調査は、数値や数量に重きを置いている。
 政策づくりでは、定性的調査と定量的調査の双方を活用していく必要があるだろう。今回は、定量的調査であるアンケート調査と統計データ分析調査について言及する。

アンケート調査とは

 アンケート調査とは、情報収集を行うためのひとつの手法である。あらかじめ用意した質問に対して多数の人に回答してもらい、それを集計して資料化する調査である。
 アンケート調査の回答数は、母集団が大きくても400弱のサンプルを無作為抽出すれば十分といわれている(仮に100万人の場合は384のサンプルでよいとされている)。アンケート調査を実施すると、調査者は、しばしば多くの回答を回収することに躍起になる傾向がある。しかし、重要なことは回答数の多さではなく、回答率(有効回答率)を高めることである。なお、回答率とは配布したアンケート数に占める回収されたアンケート数の割合である。白紙など無効なアンケートを除いたものの割合が回答率(有効回答率)になる。回答率は、一般的には60%以上必要であるといわれており、50%を切るようでは、参考程度とせざるを得ないだろう(田村秀『データの罠 世論はこうしてつくられる』集英社新書(2006年))。
 ところが、昨今はアンケート調査に回答しない人が増加しつつある。筆者は、しばしばアンケート調査を実施している。法人や団体等を対象としたアンケート調査の回答率は90%以上を確保できているものの、自然人(個人)を対象とした場合は、その回答率が40%台ということもある。回答率を高めるために、アンケート調査の回答者に対して謝礼(謝金に限らず図書カードやノベルティグッズなど)を提供することも一案である。謝礼を提示することにより、回収率が格段に高まる傾向がある(自治体の場合は、ノベルティグッズを謝礼とすることは自らの自治体のアピールになるため、シティプロモーションの観点からもよいと思う)。
 収集したアンケート調査の結果をクロス集計することにより、新しい視点が開けてくる。クロス集計とは、2~3の項目に着目してデータの集計や分析を行うことである。特定の事象に対する影響因子の相互関係を分析することを目的に実施する。このクロス集計は表計算ソフトを使って行うことができる。
 アンケート調査のポイントは、実施する前に「何を知りたいのか」を明確にすることである。アンケート調査を進めるに当たり、「とりあえず、こんなことを聞いてみよう」という意識で実施しても、「とりあえず、こういう結果になりました」という程度のものしか得られない。アンケート調査は「仮説検証型」や「現状把握型」の調査であり、仮説を検証したり、現実に起きていることを把握するために実施する。そして得られた結果を活用して実証していくことが望ましい。インタビュー調査やヒアリング調査は「問題発見型」調査ともいわれている。調査研究の手法は使い分けが大切である。

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