2017.01.25 議会事務局
第20回 予算審査で戦うために
質問したいことについて、どう勉強したらいいの?

まず、前年度の決算や行政評価と比べてみましょう。実績が決算では下がり、行政評価の結果も低いのに、同額・増額だったら疑問を持ちましょう。また、廃止事業は予算案に掲載されないので注意してください。前年度決算や今年度予算と比べて違いを見つけるのは王道の勉強法です。
次に、過去の議会答弁を確認しましょう。大抵のテーマは過去に誰かが質問しているものです。実は過去に苦し紛れのその場しのぎで「検討します」と前向きな答弁をしていたのに、その後、全く進展していないこともあります。ある自治体議員は、事務局職員が感心するくらい過去の議会答弁を読み込んできて質問を繰り出していました。今は会議録検索システムを導入している議会が多く、過去の答弁を簡単に検索することができます。活用しない手はありません。
そのほか、財政的視点としては、収支バランスや翌年度以降の経費見込みを調べてみるということも重要です。自治体の予算総額は限られていますから、新規・拡充を喜んでばかりもいられません。何かを増やせば何かを削らざるを得ないはず。無理に増やし続けて財政赤字に陥るのを見抜けなければ、議会はチェック機能を果たせなかったことになります。
ところで、勉強仲間は同じ会派の議員だけではありません。他会派と合同で勉強をしている議員の方も中にはいます。意見の違いがあるからこそ新たな視点も得られるものです。
執行機関が嫌がる質問って、どんなもの?

「この金額の内訳は?」などと簡単な数字について尋ね、答弁に納得するだけなら嫌がりません。予算審査は居酒屋談義ではないので、思いつくままに会話をするだけでは、議論は深まりません。演説会でもないので、自分だけまくしたてても議論になりません。発言時間制ならば肝心なことを答えずにすみ、執行機関は大喜びでしょう。嫌がるのは、核心を突く指摘を簡潔にされ、何とか答弁しても残り時間がまだあって更なる追及が延々と続く質問です。
いわばボクシングでしょうか。単調なジャブの連打では容易にガードされてしまうので、無意味な質問を繰り返すのはダメ。相手にクリンチされて時間稼ぎをされるような、曖昧な答弁を長々聞かされて時間切れもダメ。相手に届かないパンチが空を切り続けるだけのような、自分だけしゃべって答弁の時間が残らないのは論外。でも、ゴング早々、ストレート一発でノックアウトのような、最初の質問だけで満足な答弁が得られるはずもありません。ジャブを打ったら相手がどう反応するかイメージし、打ち返されても食い下がり、ロープ際まで追いつめて、どうやってとどめの一撃を放つか、シャドーボクシングのように答弁者の反応をイメージして、次に続けていく質問も考えておく。そんなシミュレーションが必要です。
ただ、答弁者も人間ですから、ひどく非難されると絶対に譲ってやるものかと意地になります。執行機関の立場も理解した上で建設的な着地点に持っていくのが賢い攻め方です。
予算案に賛成の場合は、どんな質問がいいの?

予算案に反対したり執行機関を追及したりすることばかりが予算審査ではありません。予算案の中の施策には、議員自身の要望に沿ったものもあるでしょう。そんな場合は何も質問しないとか単に執行機関を評価するとかだけでなく、自分の主張が実現したとアピールしつつ、その執行がきちんと目的に沿ったものになるよう求めるのがいいでしょう。賛成だからといって首長を褒めちぎって感謝を示すだけでは、議会の存在意義が疑われてしまいます。
とはいっても、首長や職員の努力や貢献をそっちのけにして自分だけの手柄のように吹聴したら、執行機関側も面白くありません。自分が賛成している施策に強く反対している議員がいるならば、あえて質問して反対議員の意見を論破する説得力をもって主張を明確にし、執行機関の味方になって後押しをすれば、自分も執行機関もハッピーになれます。
いかがでしたか? 質問の仕方は、龍谷大学の土山希美枝教授や議会事務局実務研究会の仲間である塚田洋氏が、一般質問のための勉強法などの記事を「議員NAVI」に執筆していますのでご参照ください。次回は「ICTを用いた議会広報」について取り上げます。