2017.01.13 仕事術
第2回 決算審査(監査)と、決算認定(議会)はどこが違うのか?
ここで、決算審査における議選監査委員の優位点についても、あえて強調しておきたい。議選監査委員は、議会での決算認定の経験がある。決算書の形式や、決算認定での勘所、急所についてはある程度理解できている。また、予算の段階で審査しているので、当該予算についての一定の理解がある。議選監査委員や自治体職員出身の監査委員に比べ、外部から選任された監査委員は、地方自治の政策遂行の仕組みなどについて十分に承知している例は少ないようだ。例えば、下水道建設事業、子育て施策や介護施策など、自治体個々の特殊性もあるため、専門的な書籍を読んでも理解できる部分は限られており、制度全体について正確な理解を得るためのハードルは存外高い。その点、議選監査委員は、その議員の興味関心の分野にもよるが、門前の小僧ではないが、自治体独自の事情に通じている。しかし議選監査委員も、議会の決算認定のノリで質問をしてしまうと、これもまた問題とされる。私も「監査の質疑は、『一般質問』とは違います」と注意された経験がある。
監査事務局としても、着眼点案を用意するとはいえ、議選監査委員については、2名のうち1名は、一度は議選監査を経験した議選監査委員であると、やりやすいようだ。私の2回目の議選監査委員就任時は、もう一方の方も経験者。代表監査委員も常勤監査委員も複数年経験していたため、監査の審査体制や監査報告書の形式の変更など、より一歩進んだ監査が実施できた印象がある。
最終的に、決算審査では意見を付すが、我が市の場合は決算審査で指摘された事項が全て記述されるわけではなく、「決算審査意見書」の「むすび」に指摘事項の中でも特に配慮を要すべき項目について記述することになる。
だが、その記述は具体的ではなく、抽象的であり、つまらない。他市では、この点について工夫をしているようだ。四日市市監査委員は、「むすび」を「まとめ」と「意見」に分けて記述している。「意見」では、「3.より分かりやすい決算公表を目指して」、「4.不用額について」、「5.収入未済額及び不納欠損額について」など、7項目の意見を5頁にわたって記述している。
大分市監査委員も、「むすび」(審査意見)とし、さらに、「むすび」(審査意見)を[総括]と[個別意見]に分けている。個別意見では、「3 プライマリーバランス(基礎的財政収支)の状況」など5つの項目について意見を述べている。
また、会津若松市監査委員は、冒頭に「審査の意見」を配置し、審査結果についての個別意見という項目を立てて、10頁にわたって個別意見を記述している。ざっと見ただけで議会改革が進んでいる市は、監査委員の審査意見も一歩踏み込んでいるようだ。
監査にも議会にも有用な議選監査
以上述べてきたように、議選監査の存在は、予算を審議しているという点などからも決算審査での議論に深みと広がりを与える意味で有用であるし、一方で、議選監査を経験した議員が、監査委員としての着眼点を意識しながら、今度は一議員として、議会の決算認定に臨むことで、議論の質がレベルアップするという効果も期待できる。もちろんそういう好循環を生むためには、現役の議選監査委員や議選監査経験者が、その責任を深く自覚して行動することが重要であることはいうまでもない。