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2016.12.26 仕事術

第22回 調査研究の視点(1)

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② ヒアリング調査・インタビュー調査
 ヒアリング調査・インタビュー調査とは、実態を把握するために、対象者への聞取りを実施するものである。そのため、聞取り調査や面接対談型調査とも称される。ヒアリング調査・インタビュー調査は、1対1で個別に行うものと、集会の形(グループ・ヒアリング)で行うものがある。調査研究の時間がある場合は併用が望ましい。このヒアリング調査・インタビュー調査は、視察の一形態である。
 一般的にヒアリング調査・インタビュー調査は、数をこなさないと上達しない。はじめからうまくいくことは少ない(数多くヒアリング調査を実施してきた筆者も「まだまだ」という感じである)。同調査を実施する場合は、事前に対象者に質問項目を提出し、それに基づいて聞取りを進めた方が効率がよい。そしてヒアリング対象者の了解が得られれば、テープに録音し反訳した方がよいだろう。反訳したものを、「テキストマイニング」を活用して分析することも一案である。テキストとは文字や文章という意味であり、マイニングとは大量のデータを解析して有用な情報を抽出することである。マイニングの語源は、鉱山から金属の鉱脈を採掘(=Mining)することに由来している。テキストマイニングは、通常のテキスト(文字や文章)からなるデータを単語や文節で区切り、それらの出現頻度や共出現の相関、出現傾向、時系列などを解析することで有用な情報を取り出す方法である。テキストというデータから、隠れた情報や特徴、傾向、相関関係を探し出すことが可能となる。言い方が複雑になってしまうが、定性的調査の定量化といえる。
 テキストマイニングに関心を持たれた読者は、KH Coderのウェブサイト(http://khc.sourceforge.net/)を参照してほしい。同ウェブサイトにテキストマイニングのフリーソフトウェアがあり、活用事例なども紹介されている。

③ 有識者ヒアリング調査
 ある分野の有識者や専門家等を対象として、訪問面接で聞取りを実施するものである。このヒアリング調査により、まだ活字になっていない貴重な情報を得ることができる。
 改めて指摘する必要もないと思うが、ヒアリング調査の謝礼は用意しておいた方がよいだろう。しばしば(有識者や専門家等からの)情報(知見)の提供は無料と勘違いしている人がいる。しかし、その考えは改めるべきである。有識者や専門家等が持つ情報は、長年にわたり彼らが自身に投資して(図書購入費やヒアリング調査の旅費など)、ようやく獲得した価値ある情報である。その貴重な情報を「無料で手に入れたい」という発想は、あまりよくないと思う。
 筆者は数多くのヒアリング調査を受け入れているが、謝礼を提示されるのは10回に1回程度である(念のため言及するが、謝礼が欲しいわけではない)。もちろん謝礼を提示されても断っている。しかし、中には「ヒアリングを受け入れて当たり前だろう」というスタンスで筆者に申し込んでくる方もいる。このような態度はよくないと思う。筆者に限らず多くの場合は、謝礼を提示しても断られると思われる。それでも、一応、謝礼は用意しつつ、「貴重な時間を割いてもらって対応してくれている」という感謝の気持ちを持ってヒアリング調査に臨むべきである。この有識者ヒアリング調査も視察の一形態である。

④ フィールド調査・現地調査・海外調査
 フィールド調査とは、ある対象を調査しようとするとき、実際にそのテーマに関係した場所を訪問し、その対象を直接的に観察することである。調査研究の基本は現場に行くことである。机上の学問では何も分からない。実際に現場に足を運ぶことにより、はじめて理解できることが多々ある。
 時間の許す限り現場を訪れた方がよいだろう。現場の状況が的確に把握できなければ、実効性(実行性)のある政策は提案できない。また、時間と予算が許されるのならば、海外に行くことも一案である。このフィールド調査も視察のひとつである。

⑤ ケーススタディ調査・参考事例調査
 ケーススタディとは「ひとつの社会的単位(個人・家族・集団・町など)を事例として取り上げ、その生活過程を社会的・文化的背景と関連させながら詳細に記述し、そこから一般法則を見いだしていく手法」である。ケーススタディ調査は、参考事例調査とも称される。
 ケーススタディ調査の主眼は、「参考となる事例」を収集することにある。この参考事例を集める際、2つの視点を持つとよいだろう。第1に「ベストプラクティクス」という視点である。ベストプラクティクスとは「最も効果的、効率的な実践の方法。又は最優良の事例」であり、簡単にいうと「よい事例」という意味になる。よい事例を収集し、その中から共通項を見つけ出し、それらを自分たちの事例に当てはめていく。複数の事実から共通項を取り出せば、再現性が高く法則化することができる。抽出した共通項は再現性が高いため、自分たちの自治体にも移転しやすい。その意味で、参考となる事例は複数集めた方がよい。
 第2に「反面教師」という視点である。反面教師とは「悪い見本として反省や戒めの材料となる物事」という意味を持つ。すなわち「悪い点は決してまねをしない」ことが重要である。
 視察はベストプラクティスばかりが対象となるが、反面教師ももっと取り上げてもよいだろう。もちろん、視察先に面と向かって「反面教師とするために視察に来ました」とは言えないと思うが……。実は、筆者は反面教師としての視察をしばしば実施している。失敗事例にも多くの共通点がある。失敗事例に学び、同じ失敗をしないことが大切である。

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