地方自治と議会の今をつかむ、明日につながる

議員NAVI:議員のためのウェブマガジン

『議員NAVI』とは?

検索

2016.11.25 政務活動費

第50回 自己所有物件の事務所賃借料の政務活動費からの支出の是非

LINEで送る

【平成22年3月26日熊本地裁判決抜粋】
 事務所が、自宅と同一建物・敷地内にある場合や自己所有物又は本人が代表者等の機関となっている法人からの賃借によるものである場合には、そもそも事務所賃料(駐車場の賃借料も含む)・維持費が発生していること自体に合理的な疑いが強く生じるから、このことは、当該支出が議員の行う調査研究活動のための支出として合理性ないし必要性を欠いていることを疑わせるに足りる客観的事情ということができる。また、当該事務所が、近親者からの賃借又は近親者が代表者等の機関となっている法人からの賃借によるものである場合には、それ自体が直ちに事務所賃料・維持費が発生していることに合理的な疑いを生じさせるものではないが、この場合においても、具体的事情によっては当該支出は議員の行う調査研究活動のための支出として合理性ないし必要性を欠く場合もありうる。

【平成27年5月20日名古屋高裁判決抜粋】
 市議会議員が調査研究活動を行うために使用する事務所を賃借するに際し、当該議員が代表者を務める会社から当該事務所を賃借する場合、第三者が賃貸人となる場合に比し、賃料額が適正な価額を超えて恣意的に定められるなどの弊害が生じる蓋然性が高いというべきである。そうすると、このような場合には、政務調査費の本来の使途及び目的に違反する支出であることを推認させる外形的事実が存在するものと認められ、被告において賃料額などの契約内容の合理性等について適切な反証をしない限り、賃借料の支出は使途基準に反した違法な政務調査費の支出に当たるというべきである。

【平成27年7月30日大阪高裁判決抜粋】
 A議員の政務調査用事務所は株式会社Aの事務所と併設されており、株式会社Aの役員はA議員が代表取締役、その妻であるB及びその子であるCが取締役、A議員の母であるDが監査役であったから、A議員が株式会社Aに対して支払った政務調査用事務所の賃料は、実質的にA議員の利益になっていたというべきである。そして、議員の利益となる賃料は、議員が行う調査研究活動のために必要な事務所の設置、管理に要する経費とは認められないから、A議員が株式会社Aに対する賃料に政務調査費を支出したことは違法である。

 これに対し、平成25年6月4日東京高裁判決や平成27年11月12日大阪高裁判決は、議員の自己所有又は議員が代表を務める会社が有する事務所を政務活動の事務所として使用し、その経費を支出するのは違法であるとはいえず、支出することは可能であると判示した。

【平成25年6月4日東京高裁判決抜粋】
 自己若しくは親族が代表者を務める各会社から、いずれも事務所を賃借しており、それら賃料額が不当に高額であるとか、政務調査活動及び賃貸会社の使用のほかに、後援会や選挙事務所による使用もあるなどの特段の事情は認めるに足りないから、使用対価の半額に相当する額を調査研究活動に要した支出と認めるのが相当である。

【平成27年11月12日大阪高裁判決抜粋】
 事務所の賃貸人が議員自身又は親族が役員を務める法人であったとしても、現に当該議員が当該事務所を政務調査活動のために使用しているのであれば、これに対する賃料を支払うことは当然であるから、そのような関係があることだけをもって直ちに当該支出が違法であるとはいえない。そして当該支出が違法であることを認めるに足りる証拠はない。

 以上の判決を踏まえて考えた場合、法的にはどちらの考えによることも可能であるが、自宅や自己所有建物から政務活動のための事務所を賃借し賃料を得ることは適当でないと解する。

この記事の著者

議員 NAVI

今日は何の日?

2025年 425

衆議院選挙で社会党第一党となる(昭和22年)

式辞あいさつに役立つ 出来事カレンダーはログイン後

議員NAVIお申込み

コンデス案内ページ

Q&Aでわかる 公職選挙法との付き合い方 好評発売中!

〔第3次改訂版〕地方選挙実践マニュアル 好評発売中!

自治体議員活動総覧

全国地方自治体リンク47

ページTOPへ戻る