2016.11.25 議会事務局
第18回 悩める少数会派
議会事務局実務研究会 大島俊也
自治体議員の皆様、こんにちは。第18回目の今回は、何かとお悩みが多いであろう「少数会派」についてです。「少数会派は損をしている」。たまに聞くそんな声はウソかホントか、実際のところをお話ししてみたいと思います。
言いたいことを言わせてもらえないってホント?

発言時間制をとっている議会の一部では、会派の人数を基準に発言時間の長さを決めています。会派の人数に○分間を乗じた時間が1会派当たりの持ち時間とされるので、少数会派の持ち時間は短くなり、発言の背景や根拠を詳しく話せなかったり、答弁に納得できなくても議論を中断せざるを得なくなったりして不完全燃焼に終わることも。
ただ、大会派は持ち時間が長くても、所属人数で割れば結局は少数会派の議員1人当たりの時間と変わりません。同じ会派の議員が持ち時間を自分に譲ってくれるか、自分が譲ることになるかは力関係などに左右されます。「時間がない」のは、どの議員も同じです。
簡単な事実確認や本題に無関係な話は避け、核心の議論に集中して時間を有効に使いましょう。傍聴者が辟易(へきえき)する演説より、簡潔な追及の方が執行機関の曖昧な答弁を際立たせて得だと考えてみてはどうでしょう。ちなみに、大会派は発言内容や表決態度を拘束される面もあり、少数会派の方が独自性を出しやすいというメリットもあります。
ところで、議長や委員長の議事進行の態度が少数会派にだけ厳しく、言いたいことを言わせてもらえない議会もあるようです。同じ発言でも、議長の出身会派などの大会派の議員は注意せず、少数会派の議員の発言は制止したりします。議長や委員長は公平中立に議事を進行しなければならないので許されないことですが、議員も人の子、根絶は困難です。少数会派だと誰もがそんな憂き目に遭うわけでもなく、議員の個性で扱われ方も変わります。嫌われ者になりすぎて無駄な争いにエネルギーを費やすのではなく、有意義に活躍できるよう立ち回るのも、少数会派のサバイバル術として大事かもしれません。
議会のノウハウやマナーを教えてもらえないってホント?

どこの世界にも、その世界特有の文化や流儀があるものです。法律や申合せに明文化されたものもあれば、暗黙の了解事項とされている不文律や暗黙知もあります。自治体議会の世界にもあるそんなノウハウやマナーは、大会派の若手議員なら多くの先輩議員から指導してもらえますが、少数会派の若手議員は、同級生も上級生もいない過疎地の学校の生徒のようなもので、教えてくれる人があまりいません。学校の先生は、授業をしてくれても、先生の弱みや試験のヤマ、果ては授業のサボり方を教えてはくれません。学校生活をサバイバルするのに、多くの子どもは先輩や友達との関係を頼りにします。自治体議会も同じで、少数会派の議員は「教えてもらえない」というより「教えてくれる人が身近にいない」という方が正確かもしれません。ただ、前述の学校の先生に近い公式な立場の議会事務局も、公式な情報や暗黙のマナー程度はもちろん教えますし、中には裏技を教える職員もいるようです。その情報の量や質は、自治体議会や職員の姿勢によって相当違ってきます。
また、大会派の議員もみんなが「忠臣蔵」の吉良上野介のようにイジワルではありません(吉良公も実は名君だったようですが)。異なる考え方の議員でも先輩・同僚として尊重すれば気にかけてくれる人もいます。過疎地の学校と自治体議会が違うのは、全校に上級生や同級生がいないのではなく、隣の教室にはいるということです。
ちなみに、「議員NAVI」の「みんなの議会事務局!」を頼ってみるなんて方法もあります。