2016.10.25 仕事術
第20回 視察の成果を政策提案に活かす視点(2)
●筆者が勧める視察先
羽村市(東京都)の「はむら家族プロジェクト」を紹介したい。まだ開始されたばかりであるが、注目を集めつつある政策である。
同プロジェクトは、未就学児を育てる20代・30代の若い子育て世帯をターゲットに、転入・定住の促進を目的としている。特に市民が感じている「暮らしやすい」、「子育てしやすい」、「交通が便利」など、「羽村市らしさ」を意識した中心的価値を発信する取組である。
羽村市の魅力を掘り起こし、ポスターとして可視化し展示して広く発信することで、郷土愛の醸成を図るとともに、市民の意見をもとにブランド構築を行っている。写真1・2がポスターである。同プロジェクトは自治体目線ではなく、市民参画による市民目線を中心に進めている。市民目線のひとつの手法として「魅力発信市民記者制度」を採用している。市民が感じる羽村市の魅力を、市民の視点・考えから自ら取材・執筆活動を行い、専用サイトで発信している。
また、転入・定住促進、子育て支援を目的に、羽村市の魅力や子育て世代が必要とする情報をワンストップで発信する専用サイトを構築している。さらに、ベネッセコーポレーションと連携し、『たまごクラブ』・『ひよこクラブ』に、羽村市の暮らし、子育ての魅力や、市民の魅力的な生活スタイル等を記事として掲載し全国へ発信もしている。
羽村市のターゲットを絞り込んだ「はむら家族プロジェクト」には、自治体が人口の維持や増加を目指す様々なヒントがある。一度、視察に行かれたらどうだろうか。
〈問合せ先〉
羽村市企画総務部シティプロモーション推進課
TEL:042-555-1111(内線342)
E-mail:s102020@city.hamura.tokyo.jp
●推薦する図書
◦牧瀬稔=板谷和也編著『地域魅力を高める「地域ブランド」戦略―自治体を活性化した16の事例』東京法令出版(2008年)
筆者が執筆した図書で申し訳ないが、同編著を推薦したい。地域ブランドを「手段」として捉え、定住人口や交流人口、企業などを獲得するという政策目標を実現している16事例を紹介している。特に個別的に成功事例のポイントを分かりやすく、既存の自治体でも応用の利く内容としてまとめている点が同編著の特徴と思っている。なお、同編著はすでにすべて売れ切れている。そこで同編著に関心のある読者は、すみませんが、図書館に行っていただくか、筆者に連絡をいただければと思う。