2016.10.25 仕事術
第20回 視察の成果を政策提案に活かす視点(2)
地域ブランドの盲点
「地域ブランドの構築は人口を増加させる」は本当だろうか。筆者のもとにくる問合せや取材は、この「地域ブランドの構築は人口を増加させる」が前提になっていることが多い。この点は冷静に捉えなくてはいけない。
今日、ブランド総合研究所や日経リサーチなどが「魅力的な市町村ランキング」や「都道府県ブランド力ランキング」を発表している。実施年により、多少順位の変動があるが、上位にランキングされる自治体には、函館市や札幌市、小樽市、京都市、沖縄市、軽井沢町、箱根町、屋久島町などがある。これらの自治体は魅力的であり、地域ブランドの要素も高い。そして、自治体や議会の視察の候補地にもなっている。視察の候補地に挙がる理由は、冒頭の「地域ブランドの構築は人口を増加させる」が前提となっているからである。
表は、「地域ブランド調査2015」(ブランド総合研究所)における魅力度上位30市区町村と、国勢調査における人口増加率(2015年−2005年)を記している。政令市と特別区は人口けん引力があるため、それらを除いてみると、人口の増加自治体は7団体であり、減少自治体は16団体という結果になる(対象は23団体)。すなわち、ランキング上位の自治体のすべてが、人口の増加を達成しているわけではない。魅力的な市町村であっても、大きく人口を減少させている事例もある。すなわち、地域ブランドで有名になっても、人口の増加が約束されたわけではない。
筆者は「必ずしも人口が増加しないのだから、地域ブランドは意味がない」といいたいのではない。しばしば指摘されている「地域ブランドの構築は人口を増加させる」は、「必ずしもそうではない」という事実を伝えたいのである。もし、人口増加を目指すのならば、地域ブランドで有名な自治体に視察に行くのではなく、人口が増加している自治体に視察に行くべきである(この視点は基本的であり、当たり前と思われる)。
また、地域ブランドを活用して人口を増加させたい場合は、「人口が増加するような地域ブランドを創造する」という発想が大事である。
盲点という言葉には「気づかずにうっかり見落としてしまうこと」という意味がある。盲点に気づくためにも、しっかりと政策研究を進めていく必要があるだろう。
●今回のポイント
(1)行政資源が減少していく中においては、積極的な政策の廃止も求められる。
(2)政策提案には、「廃止・新規型」と「廃止・終了型」もある。
(3)政策づくりには盲点に注意する。政策研究をしっかり行うことで盲点に気がつく。