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2016.10.25 仕事術

第20回 視察の成果を政策提案に活かす視点(2)

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一般財団法人地域開発研究所 牧瀬稔

 前回に続き、今回も視察前や政策づくりにとりかかる前に、念頭に置いていた方がよい視点を紹介する。前回は、政策(施策や事業を含む)を提案するためには、大きく5つの類型があり、そのうちの3つを紹介した。
 第1に新しい問題に対応する「新規提案型」、第2に既存政策の穴を埋める「補完・改善型」、第3として、行政資源をさらに投下する「上乗せ・拡充型」である。これら3つに加え、今回紹介する2つを加えた5つの類型を意識して、視察先の選定や政策提案を進めていくとよいだろう。その方が効率的に政策づくりを進めることができる。また、視察がより有意義なものとなるはずである。
 以下、残る2つの類型について説明する。

政策提案には「廃止」もある

 先述の「新規提案型」、「補完・改善型」、「上乗せ・拡充型」には、新たに政策を創出したり、既存の政策を発展させたりする意味がある。これらは、基本的に前向きな取組である。
 一方で、既存の政策を捉える視点には、「廃止」という、やや後ろ向きの選択もある。この「廃止」は、自治体の現場ではなかなか受け入れがたい現実がある。その理由は、既存の政策を否定することは、その政策を実施している担当者の面目を潰してしまう可能性があるからである。担当者に対して面と向かって「その政策は必要ない」ということに戸惑いを感じる読者も多いだろう(少なくとも筆者は、直接的に「その政策は意味がない」とは担当者にいえない。そのため遠回しに指摘することが多い)。
 政策は一度開始されると、なかなか廃止されないきらいがある(これは行政の継続性の観点から捉えるとよい点である。しかし、悪い点にもなり得る)。その結果、年ごとに政策の「数」が増加していく。そして政策が少しずつ増加していくことは、正しい結論を招かない可能性もある。なぜならば、現在は行政資源(人・物・金など)が縮小していく時代に入っているからである。行政資源が毎年のように減少していき、一方で政策が継続的に増加していくと、「ギャップ」が生じてしまう。そして、このギャップが極限を超えると、自治体運営が立ち行かなくなる。
 簡単な例示をしたい。新しい政策提案や国等からの権限移譲、あるいは住民要望により、政策数が100から120に増加したとする(20増加している)。一方で職員数(行政資源の中で「人」になる)が100から80に減少したとする(20減少している)。今後は職員数が増加していくことは考えられないだろう。政策が120に増え、職員数が80に減少することは、単純に計算すると職員1人当たりの担当政策が1から1.5に拡大する。これは職員にとって負荷となる。
 多少の負荷ならば、勤務時間を拡大したり(例えば残業時間を増やす)、職員1人当たりの能力を高めたりする(例えば職員研修を拡充する)ことで対応できる(さらに非正規職員の増加や政策の実施を自治体外の民間企業が地元住民等に依頼することも考えられる)。しかし、継続的に政策が増加していくと、いつかは限界がくる。そして、このような状況が続くと、最終的に職員は崩壊してしまうと思われる(崩壊のひとつが鬱の増加と筆者は考えている)。
 そこで今後は、政策をつくるという前向きな提案ばかりではなく、既存の政策を廃止するという提案も重要になってくるだろう(その意味では「事業仕分け」は意味があった。しかし、事業仕分けは法的根拠がなかったため、「廃止」と仕分けされた事業が復活することが多々あった)。また、自治体の目的である「住民の福祉の増進」という観点から考えたとき、政策を「廃止」することが望ましいという結論も当然出てくると思われる。
 前置きが長くなったが、議会(議員)のひとつの役割としては、新しい政策を提案するだけではなく、既存の政策を積極的に廃止するという選択を提示していくことも求められる。以下では、政策を廃止した後の方向性を紹介する。

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