2016.10.11 政務活動費
第28回 政務活動費の第三者機関は直接、調査することはできないのか
実務の輝き
政務活動費の不正受給の背景には、事務局のチェックが及ばないことがあります。「議会事務局の職員が議員に問題を指摘するなんて出過ぎたこと」。そんな話を議員側からも事務局側からも聞くことがあります。しかし、それは大きな間違いです。議会事務局職員は議長を補佐する立場で指摘をしているのです。議長も「事務局の指摘に耳を貸さないということは、私の顔に泥を塗るようなものだ!」ときつく言ってやらなければなりません。せっかくの第三者機関を設置しても、第三者機関の事務局機能も議会事務局が負うわけですから、「政治家として責任をとるから口出しをするな」なとど事務局を恫喝(どうかつ)する議会では第三者機関は機能しなくなります。どことはいいませんが、立派な第三者機関を有しながらも活動実績がない議会は存在します。
不正受給疑惑事件が起こったことは残念なことですが、これを機会に、政務活動費の適正化についての議長の権限を高めましょう。議長がどんな形で(どんな権限をもって)、地方自治法が期待する役割を果たすかは、それぞれの議会が決めることです。議長の調査権限が条例に規定されているところもあれば、要綱などに書かれている議会もあるのは、それが議会内部のことだからです。第三者機関の調査権限も、議長の調査権限を委嘱する形に規定する場合もあるでしょうし、議長の諮問機関として当然、調査権があるとする場合もあるでしょう。また、事務局職員を手足として使って第三者機関が調査する場合もあるでしょうし、第三者機関の委員が直接、議員や会派を調査する場合もあるでしょう。
「議会の自律権」を持ち出すなら、こうしたことを自分たちの議会としてどう決めるか正面から議論すべきでしょう。それこそが議会の自律権の表れといえます。ただ、要綱などで調査権を規定した場合はもちろんですが、たとえ条例で調査権を規定したとしても、調査を拒む相手にそれを強制することはできません。犯罪捜査ではないのですから、この点は仕方がありません。
提言
政務活動費に関する改革は、議会にとってはやっかいです。なかなか合意ができないし、仕組みをつくったとしても「魂」が入らないと、結果につながりません。そうしたときに、参考となるのは「一度は地獄を見た議会」です。政務活動費で大きな問題を起こして世間からバッシングを受けた議会といってもいいでしょう。例えば、兵庫県議会では、「政務活動費の交付に関する条例」で第三者機関の根拠を規定するとともに、議長の調査権、是正勧告・命令を規定しています。是正命令はその内容が公表されるとともに、定められた期間内に是正が行われない場合には修正されたものとみなす効果まで規定しています。神戸市会(市議会)では、政務活動費検査員の領収書等の検査結果を、指摘事項(修正・対応を求めるもの)、提案事項(今後実施した方がよいと思われるもの)、要望事項(注意を喚起するもの)に分けて公表しています。
「一度は地獄を見た」からこそ、できた改革といえなくもありませんが、はじめから、こうした事項の一部でも実現されていたら、地獄を見ることもなかったともいえます。これからの世の中、政務活動費制度を維持するつもりなら、相当な覚悟が必要となることはまず間違いなさそうです。