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2016.10.11 政務活動費

政務活動費を廃止した泉南市議会

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②について――政務活動費は何に使われているのか
 自治法100条は、議会による「事務に関する調査」に主眼を置いている。14項の規定は、「議員の調査研究その他の活動」と規定し、「調査」は含まれているが「調査」に限定していない。「研究」と「その他の活動」が入っている。政務活動費を支出できる政務活動の具体的な内容と範囲は条例と施行規則で決められているが、それらを包括して「政務活動」といっている。問題は、この「政務」という言葉が曖昧であるため、議員の中には、政党活動や選挙活動などのいわゆる政治活動も含まれていると受け取る向きもいないではない。
 提案理由の②にあるように、重要な政務活動として、市民が何を求め、何を期待しているのかを知るための日常の活動、政策立案に当たり先駆的な政策を実施している他の市町村を視察する活動、民間の優秀な事業について研究する活動が行われており、その内容は、どちらかといえば、100条の主旨である「事務に関する調査」(監視活動)というよりも、市民ニーズを政策の立案や提言に反映させるための政策形成活動となっている。政務活動をこのように捉えると、14項が100条の中に位置付けられていることは、どうも座りが悪いように思われる。

③について――政務活動費は議員活動そのものへの規制か
 自治法、条例、規則、運用上の了解事項などは、政務活動費の目的や使途に関する一定のルールであるから、これを使う限り、そのルールを遵守するのが当然である。政務活動が議員活動の一部であることは確かであるが、そのための費用を支弁されていることが「議員活動そのものに規制を加える」ことになっていると理解することに問題はないか。政務活動費は、公費支給ではあるが、議員報酬と違って使途が限定されている。もし、政務活動費を、議員活動そのものを規制しないで使えるようにしようとすれば、それは議員活動なら何にでも使える公費支給ということになる。
 問題は、「政務活動費と称して費用を支弁されていること」が議員活動そのものへの規制であると考えられていることである。政務活動費は、政務活動という議員活動を費用面で支援するためのものであって、それを制限するものではない。制限と受け取られているのは、政務活動費が使途を決めずに使えるようにはなっていないからだと暗に示唆しているように見える。使途を限定せずに政務活動に使える公費支給とは、現行制度では議員報酬になる。
 上記③では、政務活動費の支給など受けずに、議員が、その自主的活動の中で、「自律的な政策提言を行うことの方が、より柔軟な政治活動を行えるのではないかと考える」とされているが、政務活動費を使いながら「自律的な政策提言を行うこと」は可能であるし、そうした例は少なくない。また、政務活動費の支給など受けない方が「より柔軟な政治活動を行える」かどうかは、政治活動の意味合いによる。少なくとも、政務活動費の使途の中には政党活動や選挙活動といった政治活動の経費は含まれていない。それは、個々の議員の経費調達能力の問題であって、政務活動費の存否とは関係がないのではないか。

④について――議員は自己責任で自由に議員活動を行うべきだ
 「議会議員は、個々の自己責任で自由に議員活動を行うべきであり」とあるが、これは、なかなか立派な物言いである。この自己責任には、自由な議員活動に必要な経費は自分で工面することも含まれているから、公費に頼らない自立の精神を見て取れる。ただし、「政務活動費の交付によって、その活動に制限が及ぶことがないよう」政務活動費を廃止するのだといっている点は疑問なしとしない。繰り返せば、政務活動費の交付は政務という議員活動を制限するものではなく、それを支援するものであるからである。
 泉南市議会は、全会一致で、上記の提案理由を認め、政務活動費の廃止に踏み切った。それは、市議会の自己決定の帰結であり、議員報酬を削減した上に政務活動費なしで議員活動を展開することになるから、今後の活動ぶりが注目される。最後に付言すれば、今まで使ってきた政務活動費の使途・領収書等の公開によって、適切な使い方であったことを示す責任は現任の泉南市議会議員全員に残っている。

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