2016.09.26 議会事務局
第16回 一歩進んだ決算審査
資料要求に執行機関が気持ちよく応えられない事情って、何?

執行機関が資料要求を嫌がる理由は「面倒だ」とか「後ろめたいことがある」とかばかりではありません。その辺りの事情を少し紹介しましょう。
第1は、「何が欲しいのか分からない」ということです。要求した資料の件名だけでは議員の意図が分からずに執行機関が勘違いし、議員がイメージしていたのと違う資料を用意してしまうことがあります。こうならないためには、事前に認識の確認が必要でしょう。
第2は、「既存のデータがないので新たに調べる必要がある」ということです。時に民間企業などに協力をお願いしなければならず、時間がかかります。執行機関としては早く提出したくても、民間企業などに「すぐには出せない」といわれれば、それまでです。
第3は、「データを持っていることを職員が知らないこともある」ということです。職員の情報共有が不十分なために起きるミスで、これは批判されるべきことです。何も疑わずに「ない」と答え、ひょんなことから後で発見して「あったよ!」と顔面そう白になったりします。
また、まれな事例として、「要求どおり提供すると外部の関係者が激怒することがある」ということもあります。地域団体や企業が絡む情報には、出すのが違法とまではいえず執行機関としての不都合はなくても、自分の意向だけで出すのが難しいデリケートな情報もあります。
ところで、話は少しずれますが、「すでに議員に配った資料にある情報を要求される」ということもあります。欲しい情報をうまく見つけられないこともときにはあって当然ですが、「この資料に書いてあります」と職員が伝えたら「それでもいいから提出しろ」と逆ギレした議員もいたそうで、こんな反応は無駄に敵をつくるだけです。
決算審査をするとき、どこに注目すればいいの?

決算審査の質疑をするとして、どこに注目して何を指摘するべきでしょうか。慣れないと、結局、決算書とは無関係に自分が関心のある話題を延々と話して終わることになりかねません。
質疑でよく取り上げられるのは執行率や実績値です。執行率とは、予算額の何パーセントを実際に使ったかを指し示す値です。実績値とは、例えば補助や助成の件数、利用人数などの値です。前年度決算での執行率や実績値と比較し、それらが低くなっていたら問いただすのは決算審査の王道です。
ところが、実績値が示されていない事業があったり、実績値が事業の本当の効果を示していなかったりすることもあり、決算審査においてはここがミソになってきます。高い執行率だけでは、その中身が実質を伴っているかの証明にはなりません。執行率や実績値が低ければ議員に詰問されるのを執行機関も分かっていますから、明らかなうそにならない程度に取り繕おうと工夫することもあります。あらかじめ現場を見たり関係者に話を聞いて生の情報を集めたり、公表されている数値の内訳や具体例を調べたりして、これらの裏側をどうあぶり出し、その先にある執行機関の考え方や方針をどう議論できるかが、議員の力の見せどころです。
自分が質問して執行機関から引き出した言葉に他会派の議員が影響されて議会としての共闘につながれば、それこそ面目躍如ではないでしょうか。
いかがでしたか? 次回は「よくある議員批判」について取り上げます。議員は報酬や人数が多すぎるなどといわれがち。こんな話題に事務局経験者なりの視点でお答えします。