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2016.09.26 仕事術

第19回 視察の成果を政策提案に活かす視点(1)

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政策提案する前の確認事項

 政策提案をするために、最低限、次の作業をしておかなくてはいけない。釈迦に説法と思われるが、次の6点を記しておきたい。
 それは、①過去の議会質問を確認したか(過去、提案内容について質問はないか。そして議員はどのような質問をしているか)、②過去の議会質問に対して、執行機関は、どのような回答をしているか(議会質問があった場合)、③首長マニフェストを確認したか(マニフェストにどう明記されているか)、④施政方針等から首長の意向を確認したか、⑤行政評価を確認したか(提案しようとする政策は、すでに実施されていないか)、⑥基本構想・総合計画・実施計画などの各行政計画を確認したか(各行政計画に盛り込まれていないか。提案する内容の位置付けを確認したか)、である。
 筆者は、議会議事録を読むことを趣味としているが(?)、たまに変な質問がある。例えば、過去すでに質問があった内容を別の数名の議員が全く同じ内容の質問をしたりしている事例である。それはそれで意味があるかもしれないが、筆者は必ずしも効果的と思わない。また、すでに計画に位置付けられて実施して成果も上がっているのに、その政策を「実施すべきだ」と提案している議員も少なくない。当然、執行部は「貴重な提案ありがとうございます。今後も引き続き実施していきます」といった趣旨の回答をすることになる。貴重な議会質問の機会をやや無駄にしているように感じる。
 このような政策提案(議会質問)が登場するのは、上記の6点をしっかり確認していないからと考えられる。最低①から③くらいは特に確認してから、議会において質問したり、視察したりしてほしいと思う。

●今回のポイント
(1)政策提案には、新しい問題に対応する「新規提案型」がある。
(2)政策提案には、既存政策の穴を埋める「補完・改善型」がある。
(3)政策提案には、行政資源をさらに投下する「上乗せ・拡充型」がある。

●筆者が勧める視察先
  近年、自治体内部に正規職員として外部人材を登用する(任期付職員)傾向が強まっている。流山市、練馬区、横須賀市などがプロモーションに関する任期付職員を採用している。今年度は、守谷市、取手市、神奈川県愛川町、茨城県利根町などがプロモーションに関して任期付職員を採用した。プロモーション以外では、草津市はまちづくりと人口推計の調査研究に従事する任期付職員を採用している。
 筆者は、現時点では任期付職員を採用した成功事例を指摘することはできない。その理由は、何をもって成功かが、筆者の中でまだ明確化されていないからである。しかし、上記の自治体が先進事例であることは間違いない。
 自治体内部の人材の多くはゼネラリストであり、スペシャリストではない(自治体はゼネラリストを育成する人事システムとなっている)。民間人材が自治体内部に入り込むことにより創発が起こり、イノベーションが生まれる傾向が少なからずある(革新的な政策が登場する)。創発とは、「多様な専門領域や思考を持った人たちが、お互いに影響し合っているうちに、新しい価値が化学反応的に内側から創出されること」を意味する。専門領域や思考を持った人たちの存在(外部人材)が、政策づくりに「新しい価値を化学反応的に内側から創出させる」役割を担うことになる。その結果、政策づくりはより進化し、一層深化していくのである。
 しかし、民間人材を活用しているすべての自治体にイノベーションが生まれているわけでもない。自治体の内部に民間人材を入れることのメリットやデメリットが多々あると思われる。そこで、上記の自治体に視察に行ってもよいだろう。
 なお、総務省は「地方公共団体における任期付職員制度の活用状況」をまとめている。そちらのホームページも参照していただきたい。
◦地方公共団体における任期付職員制度の活用状況(総務省)
 http://www.soumu.go.jp/menu_news/s-news/01gyosei11_02000047.html

●推薦する図書
◦藤田勝利『ドラッカー・スクールで学んだ本当のマネジメント』日本実業出版社(2013年)
 上記書籍はやや厚いものの、平明に書かれており、ドラッカーの思想を分かりやすく、そして具体的に解説してくれる良書である。また、著者自身がドラッカー・スクールで学んだ経験もあるため、事例が豊富に記されている。
 ドラッカーは「顧客の創造」という言葉を残している。そこからヒントを得て、筆者は「住民の創造」を主張している。「住民の創造」という考え方が、これからの自治体運営に必要であると、かなり前から指摘している。同著には「住民の創造」のためのヒントも多く記されている。
 上記の「筆者が勧める視察先」の中で「イノベーション」という言葉を使った。ドラッカーは「企業の目的は、顧客の創造である。したがって、企業は2つの、そして2つだけの基本的な機能を持つ。それがマーケティングとイノベーションである」という言葉を残している。このイノベーションについても、同著の中で詳述されている。「住民の創造」(顧客の創造)に関心を持った読者は一読されてもよいと思う。

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