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2016.09.26 仕事術

第19回 視察の成果を政策提案に活かす視点(1)

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補完・改善型

 自治体は、実に多数の事業を実施している(おおよその事業数を知りたければ、事務事業評価を参考にするとよいと思う)。そのため間接的な政策提案において、今までにない「新規提案型」を採用することはまれと思った方が間違いない。提案する当事者が新規と思っていても、よく調べるとすでに実施されていることが意外に多い。
 しかし、当事者が新規の政策を提案しようと思ったのだから、既存の政策は効果的に進んでいない現状にあると考えられる。そこで政策を提案する当事者は、「なぜ、うまく進んでいないのか」や「既存政策のどこに不備があるのか」などを考え、既存政策の「穴」を指摘する思考が「補完・改善型」である。図2はイメージ図である。多くの政策提案は、この「補完・改善型」を採用する。なお、補完とは「不十分な部分を補って、完全なものにすること」という意味があり、改善とは「悪いところを改めてよくすること」という定義になる。

図2 補完・改善型のイメージ図2 補完・改善型のイメージ

 図2のイメージを持ちながら視察に行くと、視察先の対応者の発言から様々な知見を得ることができる。しかし、その知見のすべてが自分たちの自治体に移転できるとは限らない。この点はしっかりと見極めることが大事である。つまり、人的配置や予算規模の関係や、前提となるハードが異なるため、必ずしも成功事例が自分たちの自治体に100%移転できるわけではない。成功事例を自分たちの自治体向けにアレンジしつつ、補完・改善型を念頭に置きながら、議会質問の中で政策提案していく必要がある。

上乗せ・拡充型

 上記の「補完・改善型」は、政策を提案しようとする当事者が「今の政策はうまく進んでいない」と考え、「既存政策のどこに不備があるのか」などを考察し、既存政策の「穴」を埋めていく思考であった。
 それに対し、この「上乗せ・拡充型」は、既存政策はしっかりと進んでいるが、「いまいち成果が出ていない」と考え、その理由が「既存政策に不備(穴)があるのではなく、インパクトが足りないため」と判断したときの思考である。字のごとく、既存政策に上乗せしたり、拡充したりする提案である。図3はイメージ図になる。上乗せとは「すでにある金額や数量などにさらに付け加えること。追加して増やすこと」である。そして拡充は「組織や施設を広げて、充実させること」という意味である。辞書には「組織や施設」とあるが、本稿では組織や施設に限定せず、既存政策のさらなる「充実」という意味で使用している。

図3 上乗せ・拡充型のイメージ図3 上乗せ・拡充型のイメージ

 一般的に政策を提案するときは、「補完・改善型」か「上乗せ・拡充型」が選択されることになる。その理由は、既存政策を真っ向から否定することは、その政策を実施している担当者の面目を潰してしまう可能性があるからである。多くの担当者は、真摯に既存政策に取り組んでいる。そして成果を上げようと頑張っているはずである。誰しも「あなたの担当している政策は無意味だ」と指摘されることは好まないだろう。
 繰り返すが、多くの担当者が住民の福祉の増進のために、真面目に政策を展開している。その状況の中で、「その政策は成果が上がっていないため、全く意味がない」と全否定することはなかなかできない(少なくとも筆者は、全面的に否定することはできない)。そこで、政策提案する場合は、既存政策を参考としつつ、「補完・改善型」か「上乗せ・拡充型」という思考で進めることが多くなる。
 筆者は既存政策を全面的に否定できないものの、「補完・改善型」か「上乗せ・拡充型」の思考や情報(他自治体の事例等)を伝えることにより、担当者に「気づき」を促すようにしている。その結果、担当者自らの判断で、全面的に既存政策を変更した事例は多くある。
 この「上乗せ・拡充型」は、字のごとく「上乗せ」であり「拡充」であるため、行政資源(人・物・金)の追加投入が伴ってしまう点がネックとなる。昨今は、自治体職員が漸減し、財源が厳しい中での「上乗せ・拡充型」は、よい提案だったとしても、なかなか採用されない。では、どうすればよいのだろうか。この点は、本連載第9回の「【問6】議会からどのような質問がありましたか?」において言及しているため、そちらを参照していただきたい。

 視察で得た知見を活かした間接的な政策開発の類型には、あと2つある。これらは本連載の次回に紹介したい。

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