2016.08.25 仕事術
第18回 視察で得られた知見を発信する
●今回のポイント
(1)情報発信の手段には「プル型」と「プッシュ型」がある。違いを理解して使っていく。
(2)ウィンザー効果を念頭に置いた情報発信を心がける。
(3)発信力を強化するためには、同時に受信力も高めていかなくてはいけない。
●筆者が勧める視察先
プロモーション動画が熱い。昨今では、多くの自治体がプロモーション動画を制作しつつある。いくつか再生回数が多いプロモーション動画を紹介する。
小林市(宮崎県)の移住促進に関する動画は199万回を超えている。また「日本一の刃物のまち」を訴えている関市(岐阜県)の動画は25万回を数えている。香川県の「うどんのひみつ」は約1万8,000回、同県の「うどん県にようこそ」は2万6,000回以上再生されている。
また全国移住ナビにおいては、都道府県プロモーション動画と市区町村プロモーション動画のトップ5がある。これらのプロモーション動画は、情報交流人口を増加させることが目的ならば成功事例である。まずは再生回数が多い自治体に視察に行ってもよいだろう。
ここからは読者へ「政策を考えるヒント」の提供である。今日、様々なプロモーション動画がある。その再生回数が多い動画のうち、定住人口や交流人口の増加に寄与した動画はどれだけあるのだろうか。この観点から動画を考察していくと、様々な発見があるだろう。
〔再生回数の多いプロモーション動画例〕
・小林市 https://www.youtube.com/watch?time_continue=6&v=jrAS3MDxCeA
・関市 https://www.youtube.com/watch?v=AjRPdeHCZwA
・うどんのひみつ https://www.youtube.com/watch?v=u8-ndGlz4bk
・うどん県にようこそ https://www.youtube.com/watch?v=itWhSArETEQ
・全国移住ナビ https://www.iju-navi.soumu.go.jp/ijunavi/rankingMovie/search/
●推薦する図書
・吉田利宏『地方議会のズレの構造』三省堂(2016年)
同著は「市民感覚とのズレ」、「法律上の使命とのズレ」、「時代とのズレ」の地方議会(地方議員)が陥りやすい3つのズレという観点から検討している。
吉田氏は、衆議院法制局に勤められた経験を持ち、様々な議会のアドバイザーや研修講師などをして、議会と深いかかわりを持っている。また同氏は、議会事務局実務研究会の呼びかけ人でもある。同研究会は、自治体議会事務局、国会事務局・法制局、国会図書館の職員及び経験者によって構成された実務家集団である。数々の議会に対する政策提言を行っている。
これらの経験から、吉田氏は議会が持つズレについて、端的にまとめている。ズレは民意とかい離していく契機となる。それが最終的には住民の議会への不信感につながっていく。このズレに気がつくことが大事である。
吉田氏の他の図書もそうであるが、同著も極めて読みやすい文章である。しかし中身はとても濃い(ちなみに筆者は、東京から岡山までの新幹線の中で読み終えた)。議会のズレは、当事者は意外に認識していないものである。ぜひ、議員に一読を勧めたい図書である。