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2016.08.25 政務活動費

政務活動費の適正使用――「号泣県議」と兵庫県議会の改革

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条例はどう変わったか

 兵庫県政務活動費の交付に関する条例は、どう変わったか。それまでの条例(2012年12月14日版)と修正条例(2014年9月24日版)を比較して主だった修正箇所を見ておこう。

(1)交付対象の変更
 1条の「会派及び議員に対し」を「会派に対し」とし、議員にも直接交付する従来のあり方を変えている。それが明定されているのが3条で、「県は、会派及び議員に対し、政務活動費を交付する。」が「県は、会派に対し、政務活動費を交付する。」と修正した。
 政務活動費の交付対象を会派のみとし、議員に対する政務活動費は、会派から精算払いで交付されることとなった。実際には、県議会議員改選後の2015年6月から、議員個人への前払いをやめ、一括して会派に支給し、議員は、自分が使った分だけを会派に請求する方式に改められている。
 これは、政務活動費の使用に関し会派所属の議員の指揮監督を会派の責務とする主旨である。

(2)会派及び議員の責務
 交付対象を会派に限定するねらいは、1条の2(会派及び議員の責務)の新設で明確にされている。「会派及び議員は、政務活動費が議員の責務及び役割の遂行に必要な調査研究その他の活動に資するために交付されるものであることを踏まえ、当該交付の目的に沿って適正に政務活動費を使用するとともに、その使途を明確にすることにより県民に対する説明責任を果たさなければならない。2 会派は、政務活動費の適正な使用を確保するため、その使用について当該会派に所属する議員を指導監督しなければならない。」

(3)議長の責務
 併せて、1条の3を新設し、議長の責務を規定している。「兵庫県議会議長(以下「議長」という。)は、政務活動費制度の適正な運用を期するとともに、その使途の透明性の確保に努めるものとする。」
 この規定は、9条の2に新設された「議長の調査」と連動しており、議長の責務と権限を強化するものとなっている。当然、議長を補佐する議会事務局の役割も増すことになる。

(4)政務活動費の減額
 4条が変更され、「政務活動費の額は、月の初日に在職する議員1人につき月額500,000円とする。」が「政務活動費の額は、月の初日に在職する議員1人につき月額450,000円とする。」と変更された。この減額修正は、議会全体として一連の不祥事への道義的責任を表したものと思われるが、使途の厳格化で政務活動費の返還が増えたことも考慮されたのかもしれない。
 ちなみに、野々村被告の不適切支出が発覚した2014年度の政務活動費の返還率は23.2%であった。兵庫県議会が公開した、2015年度に議員に支給した政務活動費の収支報告書によれば、改選前(4月~6月10日)と改選後(6月11日~3月)を合わせた支給額約4億6,425万円のうち、約1億5,685万円が返還された。返還率は33.8%で、2013年度の制度開始以降で最高の率を記録している。

(5)議長の調査、是正勧告及び命令
 収支報告書に関し、9条の2が新設され、「議長は、前条の規定により収支報告書が提出されたときは、政務活動費の適正な使用を確保するため、必要に応じてその内容の調査を行うものとする。」としている。
 また、9条の3が新設され、「議長は、前条の調査の結果、必要があると認めるときは、会派に対し、収支報告書の内容の是正を勧告することができる。2 前項の規定による勧告を受けた会派が、正当な理由なく当該勧告に応じない場合には、議長は、当該会派に対し、相当の期間を定めて収支報告書の内容の是正を命ずることができる。3 議長は、前項の規定による命令をしようとするときは、あらかじめ、第12条第1項に規定する兵庫県議会政務活動費調査等協議会の意見を聴くとともに、当該命令を行おうとする会派に対し、十分な弁明の機会を与えなければならない。4 議長は、第2項の規定による命令を行ったときは、当該命令の内容を公表するものとする。5 第2項の規定による命令を受けた会派が、当該命令で定めた期間を経過してもなお収支報告書の是正を行わない場合は、当該収支報告書は、当該命令の内容に従って修正されたものとみなす。」と規定されている。
 政務活動費の適正な使用の確保に関しては、議長の責務と権限が相当に拡張されている。議長職の重みが増したといえようか。

(6)兵庫県議会政務活動費調査等協議会の設置
 12条に「兵庫県議会政務活動費調査等協議会」(以下「協議会」という)に関する規定が新設された。「政務活動費の適正な使用に関する事項を調査審議するため、議会に兵庫県議会政務活動費調査等協議会(以下「協議会」という。)を置く。2 協議会は、議長の諮問に応じ、次に掲げる事務を調査審議する。(1) 第9条の3第3項に規定する収支報告書の是正命令に係る意見に関すること。(2) 前号に掲げるもののほか、政務活動費の適正な使用に関すること。3 協議会は、委員3人以内で組織し、委員は、学識経験を有する者のうちから、議長が委嘱する。4 前3項に定めるもののほか、協議会の組織及び運営に関して必要な事項は、議長が定める。」
 この条例12条に基づき「協議会」が設置された。これは政務活動費の適正な使用に関する事項を調査審議するための第三者機関で、委員には井堂信純氏(井堂信純事務所・公認会計士)、新川達郎氏(同志社大学大学院総合政策科学研究科教授。座長)、正木靖子氏(下山・正木法律事務所・弁護士)が就任した。2014年11月の第1回会合で、①海外視察調査の実施基準について、②親族雇用の制限について、③グリーン車使用の可否について、という3つの諮問がなされた(会合には正副議長、議会運営委員会正副委員長も出席)。「協議会」は、2015年3月に答申を行った。主な点は、①事務所職員として雇用する2親等以内の親族、生計同一者の給与に政務活動費の充当は認めないこと、②海外視察は事前の計画書と視察後の報告書を議長に提出し、議会ホームページで公表すること、③グリーン車利用への政務活動費の充当は制限しないが、利用実績を明記した報告書を議会ホームページで公表することであった。
 このうち①は、公私の区別をつけるという意味で重要な答申内容であった。従来は事務所職員などの親族雇用に政務活動費からの給与支給が可能とされていたが、答申は「親族でなければ政務活動を行えない合理的な理由がない」と判断し、配偶者や祖父母、兄弟姉妹、孫ら2親等以内の親族(生計同一者)を雇用した場合、給与への政務活動費充当は認めないとしたのである。議会は、答申に沿って3点の見直しを行った。

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