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2016.08.25 政務活動費

政務活動費の適正使用――「号泣県議」と兵庫県議会の改革

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東京大学名誉教授 大森彌

「号泣県議」への判決

 2014年7月、野々村竜太郎兵庫県議会議員の政務活動費の不正支出が明るみに出た。野々村議員は泣き叫びながら政務活動費の不正支出を否定した。この異様な「号泣会見」は世間を驚かせた。結局、同年7月付で県議を辞職し、2011年度以降に受け取った政務活動費計1,834万円及び遅延利息約89万円を返還した。
 県議会は各会派代表の連名で野々村議員を虚偽公文書作成・同行使罪で兵庫県警に告発した。その後の捜査で年197回に及ぶ日帰りのカラ出張、「切手代」の名目で金券を購入して私的に使用、クレジットカードの利用明細の偽造などを行っていたことが明らかとなった。2015年1月、県警は野々村元議員を詐欺及び虚偽公文書作成・同行使容疑で神戸地方検察庁(神戸地検)へ書類送検した。2015年8月18日、神戸地検は、2011〜13年度に受け取った政務活動費1,684万円のうち913万2,050円をだまし取った詐欺等の容疑で在宅起訴した。
 2016年7月6日、神戸地裁は懲役3年、執行猶予4年(求刑・懲役3年)の有罪判決を言い渡した。判決は、収支報告書に記載された出張は虚偽であり、銭欲からの犯行で刑事責任は重いと指摘する一方、詐取した政務活動費を全額返済していることや、議員辞職するなどすでに社会的制裁を受けているなどとし、刑の猶予が相当とした。検察、弁護側とも控訴せず刑は確定した。

県議会の対応

 この「号泣県議」の疑惑に端を発した不適切支出問題は、単に野々村という1人の県議の個人問題には終わらなかった。政務活動費の運営・管理(ガバナンス)をめぐる兵庫県議会全体のあり方が問われた。県議会は、この事態にどのように対処したか。以下は、その概略である。不祥事が起こってから改革に乗り出したという意味では後手に回ったが、改革はそれなりに進んだ。
 野々村県議が2011~13年度に遠方に345回もの日帰り出張をしたとして、政務活動費約800万円を支出していたことが発覚したことを受けて、県議会は、全県議を対象にして2011~13年度分の調査を行い、その結果を公表した。調査の結果、約3割に当たる県議24人と1会派の支出計約490万円の使用を不適切と認定し、返還を求めた。ある県議は、返還額が最多の約169万円で私用のガソリン代などに充てていたし、別の県議は家族を伴った出張旅費など約100万円を返還している。公私混同の典型である。
 県議会は、こうした事態に対処し、政務活動費制度の適正な運用を図るために、議会運営委員会に「政務活動費のあり方検討会」(6人の県議)を設置し、協議を行った(兵庫県議会「政務活動費の手引き」参照)。その検討結果を踏まえ、2014年9月定例会において、議会運営委員会提案の「兵庫県政務活動費の交付に関する条例の一部を改正する条例」を可決し、同時に議長は「兵庫県政務活動費の交付に関する規程の一部を改正する規程」を定めている。いずれも同年10月1日から施行された。

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