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2016.07.25 仕事術

第17回 文章作成のポイント(3)

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言葉の意図を明確にする

 また、読者に質問をしたい。紙とペンを用意してほしい。今から簡単なお願い(指示)をするので、それを紙に書いてほしい。それは「まるの上にばつを紙に書(描)いてください」である。読者の脳裏に浮かんだ「まるの上にばつ」のイメージを紙に書(描)いてほしい(書(描)き終えたら、次の段落を読んでください)。

20160725_3_3

 読者は、どのような「まるの上にばつ」を書(描)いただろうか。図3かもしれないし、図4かもしれない。あるいは図5のように書(描)いた読者もいるかもしれない。
 このように「まるの上にばつを書(描)いてください」という極めて単純な指示であっても、実際に書(描)かれるものは多様である。「まるの上にばつを書(描)いてください」と指示をした当事者は図3を考えているのにもかかわらず、指示を受けた者は図4を想定していることが少なくない。これは言葉の意図が伝わっていない状況を意味する。
 議員が視察に行き報告書を書いても、その報告書に書かれている意図が執行機関に明確に伝わっていないことが多々ある。あるいは、執行機関が議員の意図とは違う内容で捉えていることも多い。これは執行機関が悪いのではない。基本的に意図を伝えることは難しいのである(夫婦や親子でさえ確実に意思疎通ができていないときもある)。そして、この状態では、いつまでたっても政策が結実することはない。
 「まるの上にばつを書(描)いてください」と指示をした当事者は内容が伝わっていると思っていても、実は相手に指示がしっかりと伝達されていないことが多い。そこでしっかりと1つずつ確実に言葉の真意を伝えていかなくてはいけないだろう。面倒であっても、1つずつの言葉の意味を明確にしていくことが大切である。

●今回のポイント
(1)段落の種類には「意味段落」と「形式段落」があり、意識して段落を設ける。
(2)数値データは意味も書く。何かと比較することで理解が深まる。
(3)文章は肯定文で書く。肯定文を否定することはしない。
(4)語句の意味を明示する。一つひとつの語句をしっかり明示して進める。
(5)言葉の意図を明確にする。言葉の意味を丁寧に記していく。

●筆者が勧める視察先
 最近、自治体のブランドづくりが注目を集めつつあるようだ。たまたまかもしれないが、今年度、筆者が関わっている自治体の多くが「ブランドづくり」である。最近も筆者のもとにブランドについて視察がいくつかあった。「ブランドづくり」というと曖昧である。しかし、その意味することは、「地域のイメージづくり」である。
 ブランドに関しては、先進事例がある。表2がブランドに関する行政計画を策定している自治体である。

表2 各自治体におけるブランドに関する行政計画の構成等表2 各自治体におけるブランドに関する行政計画の構成等

 人口推移という観点から、盛岡市と宇都宮市に限定して言及する。2010年と2015年の国勢調査から人口の増減を確認する(2015年国勢調査の結果は速報値になる)。盛岡市はマイナス0.2ポイントほど人口が減少している。一方で岩手県全体では盛岡市を大きく上回るマイナス3.7ポイントの減少である。県内他自治体と比べると、盛岡市は人口減少の速度をいかに食い止めているかが理解できる。宇都宮市は1.4ポイントほど増加している。ところが栃木県全体ではマイナス1.6ポイントも減少している。ブランドが絶対とはいわないが、ブランドの構築(地域のイメージづくり)は人口減少に対峙(たいじ)する一手段になるかもしれない。
 このような観点から読者も考察を進めると、先進事例であっても、成功事例か失敗事例かが把握できると思う。これらの数事例から結論付けるのは危険であるが、地域ブランドの構築は、人口減少時代においても「選ばれる」可能性があるのかもしれない。ブランドに関する行政計画を策定している自治体に視察に行ったらどうだろうか。

●推薦する図書
 ・宮崎哲也『フィリップ・コトラーのソーシャル・マーケティングがわかる本』秀和システム(2011年)
 ブランドやプロモーションはマーケティングの範疇(はんちゅう)に入る。昨今は、マーケティングを自治体政策に適用しようとする事例も登場しつつある。その中で、比較的、参考にしやすいのがソーシャル・マーケティングである(なお、あくまでも「比較的」であり「絶対的」ではない。この点は別の機会に論じたいと思う)。
 同書はソーシャル・マーケティングについて分かりやすく書かれている。特にフィリップ・コトラーの提示した「マーケティング3.0」について言及している。この考えは参考になると思う。なお、一般的にマーケティング1.0は、製品中心のマーケティングといわれている。そしてマーケティング2.0は、消費者志向のマーケティングと説明される。最後に、マーケティング3.0は、価値主導のマーケティングといわれている。
 マーケティング3.0は、過去の消費者満足や差別化といった概念を引き継ぎつつ、「どんな社会をつくりたいか」という価値の提供が中心となっている。詳細は、同書をはじめ、関連する図書に当たっていただきたい。

この記事の著者

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