2016.07.25 仕事術
第17回 文章作成のポイント(3)
文章は肯定文で書く
文章は、肯定文で書くことが重要である。例えば、「参加できません」、「出社していない」、「勝てなかった」ではなく、「欠席します」、「休みです」、「負けました」の方が読者の理解が早い(図2)。つまり「参加」+「できません」とわざわざ否定するのではなく、最初から「欠席します」と肯定的に書いた方がよい。
筆者の知人に「やる気がないわけではない」を多用する者がいる。この表現は極めて悪い表現(書き方)と筆者は思っている。「やる気」(肯定)+「ないわけでは」(否定)+「ない」(否定)であるため、結局は「やる気がある」といいたいのだと思う。はじめから「やる気がある」といえないところに、何かしらの後ろ向きの思いがあるのではないかと勘ぐってしまう。
語句の意味を明示する
自治体の中には「地域ブランド」に取り組んでいるところがある。例えば「ブランド計画」という行政計画を策定し、総合的に地域ブランドを進めている自治体も少なくないが(ブランドについては、後述する「筆者が勧める視察先」でも言及している)、この「ブランド」という言葉が実は危険である。
自治体当事者は、きっと何げなく「ブランド」という4文字を使用していると思われる。しかし、実はこの「ブランド」の意味するところが不明瞭である。いきなりであるが、読者に質問である。ブランドという言葉は何を意味すると思われるだろうか(回答を持った上で、次の段落に進んでもらいたい)?
実に様々な回答があるだろう。例えば「付加価値」であったり「高級品」であったり、中には「商標」と答える読者もいるだろう。さらに、商標という考えから派生して商品やマークというイメージだけにとどまらず、住民が連想する世界観などの様々な「価値」を感じる場合もあるだろう。
地域ブランドを推進する自治体においては、ある職員は「価値」と考え、別の職員は「商標」として捉えてしまい、一方で住民は「高級品」をイメージするかもしれない。すなわち、意味がバラバラになる可能性がある。これではいけない。語句の意味をしっかりと明示する必要がある(カタカナ表記は多様な意味を持つことが多いため、できる限り避けた方がよいと思う)。
地域ブランドは何を意味するのだろうか。突然だが、読者は「アルプスの少女ハイジ」の時代を思い浮かべてほしい。当時の人々は生活のために牛を飼っていた。それぞれの家庭で牛を飼っており、普段は牛を放牧していた。放牧すると、自分の所有する牛と他人の牛が分からなくなってしまう。そこで、牛を放牧する際に自分の所有する牛を他と区別するために焼き印を押した。この「焼き印」(burned)がブランドの語源といわれている。
すなわち、ブランドとは、自分の牛と他人の牛を「差別すること」であり、「違いをつくる」ことでもある。
何げなく「地域ブランド」という言葉を使用している。その持つ意味は、「地域の差別化戦略」であり、「地域の違いづくり」ということになる。そして、あえて差別し、違いができるからこそ、高級品になり、ひいては商品の商標を示す意味になってきた。関係者に「地域ブランド」という言葉で周知するよりは、「地域の違いづくり」と称した方が理解されやすいだろう。
まとめると、語句の意味を明確にするということである。カタカナ表記に限らず、「子ども」や「高齢者」も、人により違った概念で捉える傾向がある。そこで、視察報告書を書く場合は、一つひとつの語句を明確にして進めていく必要がある。