2016.06.27 仕事術
第16回 文章作成のポイント(2)
テーマ(タイトル)や小見出しに力を注ぐ
ビジネス書作家の戸田覚氏は「タイトルは、最大25文字までにする。できれば16文字程度にとどめるのがベストだ。これは、『プレゼンの鬼』(翔泳社)で検証したのだが、人がパッとひと目見て内容を理解できる文字数のベストが16文字だからだ」と述べている(戸田覚『すごい人のすごい企画書』PHPビジネス新書(2006年))。16文字がよいかどうかは筆者には分からない。ただし、短い方がよいことは間違いないと思う。
筆者は、テーマ(タイトル)は13字から16字にとどめ、多くても戸田氏のいうように25字以内とした方がいいと思う。ちなみに一説によると、人が一度に知覚できるのは13文字以内といわれている。その理由から、Yahoo!のトピックスは、原則的に13字以内で記されている。13字以内というのは、文字を「読ませる」というより「見せる」ということになる。この13字という「見せる」瞬間で、その記事が読まれるか読まれないか判断されることになる。テーマ(タイトル)は13字以内(もしくは13字程度)に凝縮させ、一見して理解できることで読者に選んでもらわなくてはいけない。
読者が書店に行き、図書を手にするときは、背表紙にある書名を見て、「読むか」、「読まないか」や「買うか」、「買わないか」を瞬時に判断すると思う。つまりテーマ(タイトル)により決めていることになる。その意味でもテーマ(タイトル)は重要である。何気なくテーマ(タイトル)をつけるのではなく、意識してつけなくてはいけない(と言いつつ、筆者自身が全てのテーマ(タイトル)を意識しているかというと微妙である)。
書名や報告書名のようなタイトルに限らず、文章中の小見出しも意識的につけていく必要があるだろう。特に小見出しは13字以内(13字程度)に言いたい点を凝縮させることがポイントと思う。
ところで、自治体職員が報告書等のテーマ(タイトル)で使用する頻度の高い語句に「…ついて」がある。この「…ついて」は、何が言いたいのか(何を伝えたいのか)が分からない。この「…ついて」は使用しない方がよいだろう。例えば、テーマが「21世紀の地方自治体のあり方について」であると、抽象的な印象を持つ。最後の方にある「あり方について」は、何を伝えようとしているのか理解できない。そこで「21世紀における地方自治体のあり方の今日的議論と将来像」などと表記すれば、「21世紀の地方自治体のあり方」に関する「最近の議論(今日的議論)」と「(執筆者の考える)将来像」について言及しているということがタイトルから推測できる。このように「…ついて」を極力使用せず、その言いたいことを明確にした方が読者には親切だろう。
読み違いを防ぐ
読者に質問である。次の文章は何を言おうとしているのだろうか。
① 警察官は血まみれになって逃げた犯人を追いかけた。
② 雄一も慌てて私が調査した資料を読んだ。
③ これからは、男の子育てを考えましょう。
いずれも、文章作成のノウハウ書によく登場してくる文章である。①の文章は、血まみれになったのはどちらだろうか。②の文章は、慌てたのは雄一か私か、どちらだろうか。読点(「、」)を加える位置により、意味が大きく異なってくる。
①の文章に関していうと、「警察官は、血まみれになって逃げた犯人を追いかけた」とすると、血まみれになったのは犯人と理解できる。一方で、「警察官は血まみれになって、逃げた犯人を追いかけた」とすると、血まみれになったのは警察官となる。このように読点の位置で大きく内容が違ってくる。
②の文章は「雄一も、慌てて私が調査した資料を読んだ」とすると、慌てたのは私になる。一方で「雄一も慌てて、私が調査した資料を読んだ」となると、慌てたのは雄一になる。読点の位置により、意味が取り違えられる可能性がある。筆者も含めて読者も、何気なく読点をつけていると思われる。しかし、意思を持って読点をつけなくてはいけないだろう。
③の文章はカッコ(「 」)を加える位置の違いで意味が大きく異なる事例である。つまり「これからは、男の「子育て」を考えましょう」なのか、「これからは、「男の子」育てを考えましょう」なのかにより、伝えたいことが大きく異なってくる。カッコの位置でかなり内容が違ってくるため、注意が必要である。
文章作成のポイントは今回で終了しようと思ったが、もう少し伝えたいことがあるため、次回も基本的事項に言及していく。ちなみに、前文章の「今回で終了しようと思ったが、」の「が」は順接だろうか、逆接だろうか。読者なりに考えて、一度、区切ってみてほしい。