2016.06.27 仕事術
第16回 文章作成のポイント(2)
一文は100字以内とする
読者に理解されるための文章にするには、一文を短くすることが大事である。文章作成技法の図書を読むと、この「一文は短くする」ことが、ほぼ共通して指摘されている。一文を短くすることによって、読者にとって「読みやすい文章」になる。そして「読みやすい文章」は「理解しやすい文章」につながっていく。
自治体職員の文章は、一文が長い傾向がある(筆者の偏見かもしれない)。この点は注意してほしい。ちなみに、一文が長い文章の典型は条例の条文である。条例の性質上、抽象的に書く傾向があるため、どうしても一文が長くなってしまう。しかし、その結果、一文から多様な解釈が発生する。筆者は解釈の分かれる条文はよくないと思っている。一文から想起できる解釈は限定された方がいいだろう。その意味で、条文は、もっと短くしクリアにしていってもよいと考えている。
一般的に一文が長くなると、「主語」と「述語」の関係が遠くなる。その結果、文章の意味が伝わらなくなってしまう。一文が長いために、3つの主語に1つの述語という文章になったりする(わけが分からなくなる)。そのため文章を一読しても「何を言いたいのか」が理解できない。
行政計画や条例に書かれる文章の中には、句点の「。」から「。」まで200字強も続くことが多々ある。うがった見方をすると、自治体(職員)は、あえて一文を長くすることにより、主語と述語の関係を曖昧にして、何か問題が起きたときの責任回避を意図しているのではないかと思ってしまう。
ところで「うがった見方」というのは、「物事の本質を捉えようと鋭い視点で見る」という意味である。しかし「疑ってかかるような見方をする」と捉えている人が多い。このように、しばしばある用語を本来の意味とは違った意味で使ってしまうことがある。文化庁では「国語に関する世論調査」を実施しており、この中で間違った意味で使われている事例が多く掲載されているので、参考にするとよいと思う。
見出しでは「一文は100字以内とする」と明記した。筆者は文章を作成するときの書式を40字×40行に設定し、一文が3行以上にならないように意識している。つまり、今読者が読んでいるこの文章は、原則80字以内で作成されている。筆者は一文は80字くらいが妥当と思っている。
指示代名詞を多用しない
接続助詞の「…が」が少ない、一文も短い、それなのに意味が不明瞭な文章がある。その理由の1つとして考えられることは、指示代名詞が多いことである。指示代名詞とは「あれ」、「これ」、「それ」という、前の文章を受けて使われる言葉である。読者の多くは(筆者を含めて)、何気なく指示代名詞を使っていると思われる。この「何気なく」がいけない。
筆者は前述した「…が」をチェックするときに、同様に一度文章を作成した後で、指示代名詞も1つずつ確認している。具体的には「この位置で使用している『これ』は何を意味しているのか」という感じである。そして、「これ」だと分かりにくいと思った指示代名詞は、できるだけ具体的な名詞に置き換えている。筆者は、同じ語句を何度も使用してくどくなっても、指示代名詞をできるだけ使用せず、同じ語句を繰り返し書くようにしている。その方が読者の理解が進むという判断がある。
また、指示代名詞を省略しても文章が通じることが意外に多い。その場合は指示代名詞を思い切ってカットした方がいいだろう。繰り返すが、読者も一度文章を作成した後でプリントアウトをして、指示代名詞を1つずつ確認していくとよいと思う。最初は(慣れるまでは)、かなり面倒くさい作業になってしまう。しかし、書いた文章の意図や真意が読者に伝わらなくては意味がない。しっかりと読者に伝えていくために、かつ理解してもらうためには、面倒な作業でもしっかりと文章をチェックした方がよいだろう(筆者だけかもしれないが、慣れてしまえばたいした作業ではないものである)。