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2016.03.25 仕事術

最終回 都道府県別の国勢調査人口の動向分析

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人口増減率の変化の分析

 人口増減率の変化をこのように整理して記述することからさらに詳しく人口増減率がどんな変化を見せているかを調べるため、図2に、X軸に前期の増減率、Y軸に今期の増減率をとった相関図を描いた。この連載の前回(第12回)で2種類の散布図の使い方を紹介したが、時系列相関を調べる今回の方法は、さらにもうひとつの便利な使い方である。
 図の45度線より上に位置していれば今期の方が前期より増減率が上昇しているし、下ならば逆である。全国の人口が増加から減少に転じたことを裏付けるように、45度線より下の都道府県がほとんどである。45度線より上に位置する点で目立っている県は、沖縄、福岡、鳥取などそう多くない。
 さらに全体の傾向を見るため、各データとの距離の総和が最も小さくなる一次回帰線を描き込んでみると、45度より低い角度となっていることが分かる。これは、増減率の高かった地域ほど増減率の低下が大きかったことを示している。すなわち増減率格差は縮まっている。言い換えると、東京圏への一極集中はなお進んでいるが、今期は前期ほどではないといえる。これは前期で著しかった東京圏への一極集中化が2008年秋のリーマンショックによる影響で頓挫し、社会増減の程度が全般的に低下したことによる(その後この傾向はまたアベノミクス景気と並行して復活しつつあるが)。

図2 国勢調査人口増減率の変化図2 国勢調査人口増減率の変化

 上で見たように、大阪は東京や愛知と並ぶ大都市圏なのに今期は人口増から人口減に転換した点で、また静岡は太平洋ベルト中央部に位置するという恵まれた立地の県であるのに人口減少幅が大きいという点で気になる動きを示していた。しかし、この2府県の人口変化は、一次回帰線にほぼ沿っており、全国的な傾向をたどっているにすぎないことが分かる。もともと上に述べたような恵まれた地域特性を持つのに人口増減率のレベルが低い点は確かに問題なのであるが、リーマンショックによる影響を取り除いてみると、そうした特徴が前期から今期にかけて特に強まってきているわけではないのである。
 前期から今期にかけての変化で目立っているのは、沖縄、福岡、広島、宮城、鳥取などで、人口動向が一般傾向を上回って好調な点と、神奈川、千葉、滋賀、茨城、福島などで人口動向が一般傾向を下回って不調な点であり、これらの理由こそが明確にされねばならないのである。
 前期より今期の方が好調な地域では、沖縄については、全国一出生率が高く、また高齢化率が低い県であり、そのため、社会増減の要因が弱まると出生から死亡を引いた自然増の側面が目立つようになるためだと考えられる。福岡、広島、宮城などは九州、中国、東北の地方中枢都市である点が共通であり、東京圏からの人口吸引力が弱まった分、局地的な拠点都市の吸引力が目立つようになったのが理由であろう。
 鳥取については理由は異なる。図で表示した小数点一桁の数字で減少率が縮小したのは、鳥取、島根、長崎、岩手の4県のみである。これらの県は高齢化率も全国上位であり、自然減は全国に先立って前期からすでに大きな影響を及ぼしており、そのため、社会減の幅が小さくなった分だけ今期にかけて減少率が縮まったのだと考えられよう。移住促進策の効果の側面がどのくらいあるかは分からない。
 前期より今期の方が不調な地域では、福島は、東日本大震災と原発被害の影響である点ははっきりしている。しかし、同じ東日本大震災の被災県である岩手、宮城の人口動向は減少率の縮小であり福島とは異なっている。やはり原発被害の要因が勝っていると考えられる。さらに、神奈川、千葉、滋賀、茨城などの大都市圏周辺部の増加率の大きな低下については、大都市圏中心部への人口の都心回帰が影響している結果ではないかと考えられる。
 このように分析してみると、地域別の人口動向は、よりクリアに理解できるのではないであろうか。

 「本川裕のデータは語る」のコーナーは今回で最終回である。実例に基づきデータ・グラフの作成法について解説してきたが、お役に立てたか、やや心もとない。最後に、約1年間、お付き合いいただいたことに感謝しながらお別れします。どうもありがとうございました。

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