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2016.03.25 仕事術

最終回 都道府県別の国勢調査人口の動向分析

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アルファ社会科学株式会社主席研究員 本川裕

人口が増えた県、減った県

 5年に一度の国勢調査の速報人口が2月末に発表された。これは、市区町村から提出された要計表を基に、男女別人口と世帯数を速報値として集計したものであり、全国のほかに都道府県別、市区町村別のデータが発表された。総数のみの発表であり、年齢別人口や世帯の種類等はまだ分からない。要計表人口は後日公表される調査票から直接集計される確定数とは必ずしも一致しないが、両者の差はわずかなので地域別の総人口の動きについては十分に分析が可能である。
 データについては、すでに新聞等で報道されているが、前回から今回の国勢調査までの5年間の人口動向について、前々回から前回調査までの5年間と比べてどのような特徴があるかについてはあまり触れられていなかった。この連載では隔月で全国データと地域データを交互に取り上げてきたが、地域データに当たる今回は、国勢調査人口が地域分析の基本データであることを考慮し、都道府県別人口の動きから地域別人口の動向を分析してみよう。
 全国の国勢調査人口は国勢調査開始以来初めて減少に転じたが、それに伴って地域別人口の減少も目立つようになってきている。まず、都道府県単位の人口動向について概観しておこう。
 ここでは、2005~2010年を前期、2010~2015年を今期と呼ぶことにしよう。
 図1には今期の人口増減数と人口増減率について、都道府県別に大きい順、高い順に棒グラフで並べており、前期の値を参考値として点グラフで示した。国勢調査を行った総務省統計局が公表した概要資料では、増減率については同様のグラフが掲げられていたが、複数系列の棒グラフを横並びにしたグラフ(エクセルの表現では集合棒グラフ)で表されていた。ここでは、前期を棒グラフから点グラフに変更して、より分かりやすくしている。
 全国の国勢調査人口が初めて増加から減少に転じたのだから、増加から減少に転じた都道府県もかなり増えたのかというとそうではない。今回新たに増加から減少に転じたのは大阪府だけであり、全国の人口減は、むしろ、人口増加地域の増加幅の縮小と人口減少地域の減少幅の拡大によってもたらされたのである。そして前者の増加幅の縮小は全部で72万人であり、後者の減少幅の拡大は全部で51万人だったので、実は、人口増加地域の増加幅の縮小の方が影響が大きかったのである。
 すなわち、増加地域と減少地域の並存という人口動向の二極化構造には変わりはなかったが、主に増加地域の増加幅の縮小によって、その程度はやや小さくなったといえよう。

図1 都道府県別国勢調査人口の対前期増減数・増減率図1 都道府県別国勢調査人口の対前期増減数・増減率

 さて、次に、個別に見てみよう。
 今期に人口が増加したのは、増加幅の大きい順に、東京、神奈川、愛知、埼玉、沖縄、福岡、千葉、滋賀の8都県であり、上述のとおり、大阪が抜けただけであった。都市圏としては東京大都市圏、中京都市圏、福岡都市圏、地方圏としては沖縄の人口増が目立っていたといえよう。大阪大都市圏は、大阪が人口減に転じ、滋賀を除く各県も相変わらず人口減なので退勢は否定しようがない。
 人口増加地域の都県はいずれも前期より増加幅が大きく減少しているが、例外的に沖縄と福岡は増加幅が逆に大きくなっている点で目立っている。
 次に人口が大きく減少したのは、減少幅の大きな順に、北海道、福島、新潟、青森、静岡、秋田、鹿児島と続いている。基本的には三大都市圏から離れた遠隔地で減少幅が大きくなっているが、福島の場合は2011年の東日本大震災と原発事故の影響が大きいと考えられる。やや意外なのは静岡である。東京圏と中京圏の間に位置し、温暖な気候で住みよいと思われるのになぜ大きく人口が減っているのであろうか。
 これらの人口減少県は前期でも大きく人口を減らしていた。ただし、福島と静岡は減少幅が例外的に大きくなってきている。福島は上述のとおり理由がつくが、静岡の場合はなぜであろう。震災・原発事故以降の外国人の流出の影響もあろうが、それだけでは理由が薄弱と思われる。実際、国勢調査の減少率は外国人労働者の多い浜松市(-0.3%)より工業都市的性格の薄い静岡市(-1.5%)の方が大きくなっているのである。
 人口増減数から人口増減率に目を転じよう。
 人口増加率では、沖縄が東京を上回ってトップとなっている。出生率の高さや死亡率の低さが効いていると思われる。前期の増加率との比較でも福岡と並んでほかの人口増加都県と異なり率が高まっている点が目立っている。
 人口減少率が高い県は、高い順に秋田、福島、青森、高知、山形、和歌山、岩手、徳島、長崎、鹿児島、島根と東北諸県などの遠隔地が並んでいる。福島は減少幅と同様に減少率でも2位となっている。これらの県では前期から引き続き同等レベルの減少率である点が共通の特徴である。ただし、福島は減少率が高まっている点で特別である。
 人口減少地域の中で減少率が今回高まってきているのが目立つ県は、福島のほか、減少率の高い方から宮崎、奈良、大分、岐阜、三重、茨城、群馬、静岡、栃木、石川、兵庫、大阪などである。これらの府県は、上の東北などの遠隔地と比較するとそれほど減少率は高くなかった。

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