2016.03.10 仕事術
イチからわかる! 予算編成と決算分析(上)
ちなみに、前述のような財政上の対応策などについては、慣例上、行われているだけで、多くの団体におかれても、財政担当者は知らないままに、あるいは知っていたとしても、対応していないだけではないかと推測できます。多くの団体では、このように、本来の地方財政法上の措置について不知なために、不用額の対応について適切な措置が講じられていない状況にある可能性が高いものと推察します。これは、地方財政法違反とまではいえませんが、脱法行為に近いものであるとはいえるかと思います。
筆者が数十年前に経験したことです。某県からの依頼で、某町の財政分析をした際に、資料を点検分析していて、地方債に関する基本的な現状の数値が合わないことに気がつきました。将来の財政状況の動向や推移についてシミュレーションするに当たり、前提条件の現状把握に不明な点が出てきたため、担当課長に確認したところ、当該年度の公共施設整備に伴う地方債発行の許可が年度末になったため、当該年度と翌年度に分割して、地元金融機関に引き受けを依頼した、ということでした。現在の協議制度と異なる時代の対応措置でした。
筆者はそういった対応措置があるということは話には聞いたことがありましたが、自治体の実務の現場にいないため、正確には把握していませんでした。筆者が不可解な顔をしていることに不安を覚えたのか、課長は「問題でしょうか、違法でしょうか」と筆者に聞くので、「実務者ではないので不明です。違法ではないかもしれませんが、限りなく脱法行為に近いのではないでしょうか。当該年度に財源不足となるような場合には一時借入金などによる対応が必要となるのではないでしょうか」と答えた記憶があります。
このように、必ずしも財政担当者が地方自治法や地方財政法に精通して、財政運営を実施しているとは限りません。知らない者の強みです。予算の内容や予算額などについて、質問される前に、事前に、疑問や問題点などを整理した上で、各人の理解や確認のために質問することが、財政に精通するためには重要です。
(3)「予算」審議のポイント
「予算」審議については、大要、次のような諸点に留意してください。
■予算書の数値の確認
予算書の数値については、《前年度と比較した》増減額や増減率は明示されています。ただし、これらの数値は、《決算書における数値ではない》ことに留意してください。【款・項・目】の数値を確認してください。
■基本計画などとの整合性の確認
基本計画など、財政計画や実施計画は作成されているのか、確認することが重要です。
財政計画や実施計画が作成されている場合には、財政計画と予算書との整合性、財政計画の数値とのかい離状況などについて確認することが重要です。この場合、将来の財政シミュレーションなどの手法について、合理的な科学的手法(計量経済学モデルやシステムダイナミックスモデル(SDモデル)等)を用いて、将来の見通しの推計手法により、エビデンスに基づいた数値であるのかどうかについて、確認することが重要です。
他方、財政計画や実施計画が作成されていない場合には、なぜ作成しないのか、その理由を確認することが重要です。