2016.03.10 仕事術
イチからわかる! 予算編成と決算分析(上)
(2)予算書(案)に対する審議の留意点
基本的に留意していただく点は、「当初予算」は「当初」の予算であるということです。つまり、その後、内容や予算額は、事態の推移により、追加「補正」されることがあるという点です。ただし、予算書(補正予算書を含めて)に明示、掲載されていない事項や予算額を超えて支出することは、特別なことがない限り、〈予算の執行(支払)〉ができません。
予算案として提出された内容について、修正や補足などについては、「議会は、長が提出した予算案を増額して修正することも、減額して修正することも、いずれも可能であるが、長に専属する予算発案権を侵害するような修正はできない。長は議会の修正議決に異議がある場合には、これを再議に付すことが可能であり、特に修正された予算が執行不能であったり、義務費の減額等の場合には再議に付さなければならない」と解されています。すなわち、議員個々人や会派党派の要望や提案などにより、予算案の修正は可能なのです。
他の留意点としては、(当初)予算は、(前年度の)予算と増減額が比較されることが多いため、最終的な「決算(書)」とは異なるという点です。したがって、「決算統計(決算概況)」に明示されるような主要指標の推移や動向について、一元的に比較することが困難ですが、一般的には、当該項目・事項の予算額が前年度と比較して減額されている場合には、関連する主要指標の数値も低下する傾向にあるといえます。反対に、予算額が増額している場合には、関連する主要指標の数値は上昇する傾向にあるといえます。興味のある項目・事項の推移、動向について、その影響や効果を確認することも、重要な視点です。
いずれにしても、不明な点や不可解な点などについては、市区町村長や財政担当者等から納得がいくまで説明してもらうことが肝要です。一度の説明ではわかりにくいことが多々あることと思いますが、〈聞くは一時の恥、聞かぬは末代の恥〉のことわざに示すとおりです。担当者も、よくわかっていないことが少なからずあります。知らないことは罪悪ではありません。罪悪なことは、知ったかぶりをして、適当に理解したつもりになって、問題や課題について直視することができなかったことの責任です。要するに、わからないことはわからないとして、質問すればいいことなのです。大人がみっともないと、わからないことを質問しないこと、自己研鑽しないことが一番いけないことである、と自覚することが肝要です。
一例です。某市の議員研修会で、次のような質問をされました。「決算額における不用額、繰越額が多額である。これでいいのか、問題であると思うが」と。筆者は、「市の担当者はこれまでの慣例として、実行しているのでしょう。担当者は地方財政法の条文を知らないだけなのではないでしょうか」と回答しました。
確かに、自治体財政は、民間企業とは異なります。翌年度の当初の財源確保、現金確保上、ある程度の繰越金が必要なことは理解できます。市税収入や地方交付税等の交付は、4月当初にあるわけではありません。民間企業でいう、「キャッシュフロー」がないと、4月末の職員給与の支給にも支障を来たします。加えて、銀行からの一時借入金には、利息がかかります。
したがって、一定額の留保財源として、「不用額」を翌年度の当初の財源として確保するということについては理解できますが、あまりに多額な不用額や繰越額は問題であるといえます。不用額が多すぎることの要因としては、いくつか理由が考えられます。まず、予算の編成上、当該事業の経費予算額が適切に見積もられていないなどの可能性があります。他方では、経費縮減の結果として、不用額が生ずることも少なからずあることでしょう。不用額が生ずること自体は問題ではありませんが、不用額が多額すぎること、また不用額の処分、対応方法については、問題があるといえます。
つまり、不用額の生じた要因の把握が重要です。仮に、容認できる理由に基づく不用額の場合には、繰越額のうちの一部を〈財政調整基金〉等として積立金とすることによって、不測の事態に対応する財源として活用できるわけです。地方財政法7条には、【剰余金】の取扱いについて、次のように規定されています。
第7条 地方公共団体は、各会計年度において歳入歳出の決算上剰余金を生じた場合においては、当該剰余金のうち二分の一を下らない金額は、これを剰余金を生じた翌翌年度までに、積み立て、又は償還期限を繰り上げて行なう地方債の償還の財源に充てなければならない。
2 第4条の3第2項及び第3項並びに第4条の4の規定は、前項の規定により積み立てた金額について準用する。
3 前条の公営企業について、歳入歳出の決算上剰余金を生じた場合においては、第1項の規定にかかわらず、議会の議決を経て、その全部又は一部を一般会計又は他の特別会計に繰り入れることができる。
4 第1項及び前項の剰余金の計算については、政令でこれを定める。