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2016.01.25 選挙

【フォーカス!】1票の格差

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国と地方の今。明日の議会に直結する、注目の政策をピックアップして解説します。

1票の格差

 衆議院選挙制度改革に関する調査会(座長・佐々木毅元東大学長)が1月14日、小選挙区の「1票の格差」を是正する答申を大島理森衆院議長に提出した。2011年の最高裁判決が求めた各都道府県にあらかじめ1人の議員数を与える「1人別枠方式」を廃止し、新たな議席配分方法として「アダムズ方式」の採用が柱だ。
 「1票の格差」をめぐる近年の判例は、1票の格差は2倍を超えると違憲状態だが、選挙の取り消しまでは求めないことが多く、立法府に2倍に抑えるよう改革を促してきた。憲法の定める「法の下の平等」を守るためにも、衆院の選挙区の区割りを見直すことは必然だろう。
 答申に基づけば、2010年の国勢調査の結果に従い、定数は小選挙区で295から6減の「7増13減」、比例代表で180から4減の「1増5減」となる。
 この答申に対しては、「地方の声が反映されにくくなる」という面から慎重な意見が出ている。この点を論じてみたい。
 まず東京一極集中の状態で人口だけに基づいて議員数を配分していけば、議員数まで一極集中になってしまう。自分たちの県、あるいは地域の議員数が減ってしまうことで、予算や政策の面で影響力を行使することが難しくなることを意味するのだろう。
 地方対都会という構図で政策を見えれば、そのような議論は可能だ。ただ、安倍政権が進める「地方創生」のように、国が定めた絵姿の中に地方を落とし込む中央集権方式の政策が採用されることをみれば、議員の数だけが地方の声ではないことは明らかだ。
 「地方の議員が減る」ことが「地方政策がないがしろにされる」こととはイコールではない。地方の政策が各党の中で本当に議論されているのか、政党、議員の資質に負うことが多いことは言うまでもない。つまり「地方の声が反映されない」というのは、利益誘導がしにくくなるという我田引水的な発想に陥っていることもあるのではないか。
 全国知事会は「憲法と地方自治研究会」を昨年10月27日に設置、参議院選挙区での「合区」問題と現行憲法のおける「地方自治」規定の課題について議論を始めた。今年春に報告書をまとめる予定だ。参院の合区は、1票の格差是正のため夏の参院選から「鳥取・島根」と「徳島・高知」で導入される。4県2合区を含む10増10減となる。
 研究会は、参院も衆院と同じように人口だけで議員数を割り振るのでは、衆院のカーボンコピーとなり存在意義が問われるとして、参院に「地域代表的な性格」を付与しようという発想だ。二院制であるならそう考えるのは当然だろう。
例えば、米国の上院は人口比例主義ではなく50州から各2人ずつの計100人で構成されている。ドイツの連邦参院は、参院としての選挙は実施せずに各州から州知事ら代表者を選出、フランスの元老院は憲法で地方自治体の代表を確保すると規定しており首長や議員との兼職者が多いという。
 地方の声を国政に反映させるには、参院を地方の代表として位置付けるのも一つの考え方だ。そのためには、公職選挙法の改正だけでいいのか、憲法の解釈で地方自治の原則から1票の価値を柔軟に考えることができるのか、あるいは憲法を改正して参院を「地方の府」として位置付ける方がいいのかについて検討している。
 地方の声を反映させることは単純ではない。今の制度でも党や議員の質を変えることができれば可能だ。つまりは、実質から入るか、形から入るか。地方分権の推進と同じような問題にたどり着くことになる。

▼資料
・衆議院選挙制度に関する調査会
http://www.shugiin.go.jp/internet/itdb_annai.nsf/html/statics/shiryo/senkyoseido_index.html

・全国知事会の研究会
http://www.nga.gr.jp/ikkrwebBrowse/material/files/group/3/24%20151127h6.pdf

 

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