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2016.01.25 議会事務局

第8回 議会に期待される「請願」と「陳情」

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議会事務局実務研究会 林敏之

 自治体議員の皆様、こんにちは。今回取り上げるのは、「請願」と「陳情」についてです。各自治体によって審査の方法が微妙に異なっていると思いますが、住民が直接議会に対し声を上げることができるこれらの制度について、今回も実例を絡めながらお話ししたいと思います。また、陳情の取扱いについては議会改革の話題の中でよく取り上げられると思いますので、参考にしていただけたら幸いです。

請願と陳情の違いって何?

男性

 自治体議会における請願と陳情の違いは、皆様ご存じのとおり、紹介する議員がいるかどうかです。紹介議員がいれば「請願」として受理し、いなければ「陳情」として受理します。請願は必ず議会で審議されますが、陳情はどうでしょうか。現状、陳情は各議会によって取扱いに大きな差があります。議員へのコピー配布や議長への報告しか行われない議会もあれば、形式が整っていれば全て請願と同様に扱う議会もあります。陳情の取扱いは、近年の議会改革の議論の中で必ずといっていいほど取り上げられる内容です。「陳情も請願と同様に扱う」ことが「議会改革の進んだ議会」としてポイントが高いことも後押しし、議会改革を進めている議会では陳情も請願と同様に扱うと定めているところが多くなっています。
 しかし、現場の議員からは「請願(紹介議員)の意味がない」とか「あまりに本市の実情からかけ離れている内容の陳情まで時間をかけ審議する必要があるのか」などの声がくすぶっていることも事実です。また、大量の陳情が提出された場合の議会運営についても考えておく必要があります。実際に1人の住民が大量の陳情を提出している議会では、陳情以外の市長提出議案等の審議にかけられる時間が少なくなり対応に苦慮していました。請願と同様に扱う陳情について、議会運営委員会などで諮った上で決定するなどのフィルターをかけるのも一手かもしれません。

一部採択とか趣旨採択ってありなの?

男性

 さて、請願を審査していると「この部分は賛成できるけど、こっちは賛成できないんだよなぁ」とか「提出者の意見は分かるし内容は賛成なんだけど、要求している具体的内容については現実的じゃないんだよな(お金がかかりすぎるとか)」なんてことがあると思います。そんなとき、不採択にするにはあまりにも忍びないという考えから「一部採択」や「趣旨採択」を採用している議会は多いと思います。しかし、議案一体の原則からすると、請願は議案なので採択か不採択の二択しか本来あり得ません(標準市議会会議規則143条)。そのため厳格に採択か不採択しか採用していない議会も存在します。しかし、請願は修正できないことと、提出者が住民でありその意思を少しでも取り入れようとすることから、議案一体の原則をすこーしだけ曖昧にしているのが一部採択や趣旨採択なのです。正面から「一部採択はいいのか、いけないのか、はっきりしろ」といわれたら「胸を張って『いいです』という根拠はありません」と答えざるを得ないのですが、長年の自治体議会の現場で培った知恵によるひとつの着地点であると考えます。

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