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2016.01.15 条例

第24回 条例の言葉遣いは法律どおりでないといけないのか

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回答へのアプローチ

 結果として、自治体の用字・用語は国に準ずるものとなっていますが、自治体は国から命じられてそうしているわけではありません。日本語として、標準的なものを考えれば「国の基準でいいのではないか」というところでしょう。「∞」と書いて「無限」と読ませるようなものは無理にしても、日本語として「あり得る」範囲であれば国とは異なる用字・用語の基準を自治体が定めても問題はありません。事実、次の越前市のように、国の基準に準じながらも一部、独自の用字などを取り入れている自治体があります。

◯(越前市)文書の作成に係る書式、用字等に関する訓令(平成17年訓令第9号)
 (障害の表記)
第7条の2 国が「障害」の表記の在り方を決定する日までは、「障害」の文字を含む用語(人を表すものに限る。)を用いて文書を書こうとする場合であって、当該用語中の「障害」の文字を「障がい」の文字に置き換えた語を用いて当該文書を書くことが当該文書の個々の規定(一般文書にあっては、個々の文)の趣旨を踏まえた上で適切と認めるときは、前条第2項又は第3項の規定にかかわらず、その置き換えをした語を用いて文書を書くことができる。 ただし、(以下、略)。
2 略

 さて、その上で、自治体の公用文の用字・用語とは異なる用字・用語を議員提案条例で使うことをどう評価するかです。たとえ基準が訓令で定められていても議員には及びませんので、その意味では可能です。ただ、ちゃんとした理由が必要です。住民にとっては、議員が提案したものであるか、理事者側が提案したものであるかは関係ないのです。「ちょっとしたこだわり」程度ならやめておいた方がいいでしょう。事務局としては、その必要性を尋ねてみることをしなければなりません。回答としては、Aをとりたいと思います。Cは明らかに誤りですし、Bも事務局の役割についての誤解があります。

実務の輝き

 実は国の用字・用語の基準にも「ブレ」が生じているものがあります。たとえば、「子供」は国の用字・用語の基準では「子供」となりますが、ご存知のとおり、「子ども・子育て支援法」という題名の法律があります。また、「認定こども園」などという仕組みも法定化されています。これらは、独特の「ネーミング」としての漢字使用と考えることができます。ところが、「認定こども園」の定義規定は、「就学前の子どもに関する教育、保育等の総合的な提供の推進に関する法律」2条6項にあります。ネーミングでも何でもない法律の題名でも「子ども」が使われていることを考えれば、この字に関しては用字・用語の基準が不安定になっているといえそうです。国の法令では「子供」と「子ども」が混在する状況にあります。
 また、国の使い方と自治体での使い方で異なる用字・用語もあります。このところ、何かと話題となる「空家」がそれです。国では「空家等対策の推進に関する特別措置法」がそうであるように、「空家」と表記しています。ところが、各地の空き家管理条例など、自治体では「空き家」と使われる場合が圧倒的に多いのではないでしょうか?
 国の「空家」という表記は「法令における漢字使用等について」で引用する「送り仮名の付け方(昭和48年内閣告示第2号)」に従ったものです。そこでは、「慣用が固定していると認められるもの」は送り仮名を振らないとされ(通則7(2))、「空家」もこれに当たると考えられています。「空家」自体は例として挙げられていませんが、例として「貸家」が挙げられていますので、類推されたものと思われます。この「空家」も、国の用字・用語の基準が不安定になっている例といえるかもしれません。
 事務局職員としては、こうした用字・用語について議員間で疑問が出たときには、調査してアドバイスをしてあげましょう。「さぁ、どちらが正しいのでしょうね?」などと議員と一緒に首をひねっているだけでは事務方失格です。

提案

 言葉も大事さんの議会のように、議会で用字・用語が問題となっているようなら、議会側でも用字・用語の基準を話し合ってみるのもいいかもしれません。大津市議会では議会としての基準を定めています。その上で、もし、理事者側の基準と合わないようなら、理事者側に呼びかけてみるのもいいかもしれませんよ。

◯大津市議会例規文書作成規程(平成24年議会議長告示第2号)
 (趣旨)
第1条 この規程は、大津市議会における条例、規則及び規程(以下「例規文書」という。)の作成に関し必要な事項を定めるものとする。
 (文体等)
第2条 例規文書に用いる文体は、原則として「である」を基調とする口語体とし、簡潔で分かり易い表現を用いるものとする。
2 例規文書に用いる用語は、やむを得ない場合を除いて、日常一般に使われている平易なものを用いるものとする。
3 例規文書に用いる用字は、公用文における漢字使用等について(平成22年11月30日付け内閣法制局長官決定)に定めるところによるものとする。

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