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2015.11.25 仕事術

第9回 視察のための質問ポイント(5)~成功事例における“失敗”を把握する~

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政策提案と政策提言の違い

 最近、筆者が気になっていることは、「政策提案」と「政策提言」の意味の違いである。議会での議員の質問も、「……について政策提案をしたい」や「……に関する政策提言が目的である」など、政策提案と政策提言が入り混じっている。
 読者は提案と提言の微妙な違いを理解しているだろうか。実は大きく異なっているというのが筆者の考えである。それぞれの意味を辞書で調べると、提案は「案を提出すること」とある。そして提言は「考え・意見を出すこと」とある。一見すると提案と提言は同じ意味のようである。しかしニュアンスが違っている。
 例えば、自治体に営業に来たコンサルタント会社が提出する資料は「企画提案」と明記される。決して「企画提言」とは書いていない。一方でシンクタンクが国等に意見を答申する場合は「提言書」であり「提案書」は見ない。つまり、自分が関与する場合は「提案」となる。一方で、第三者的な立場にあり直接的に関与しない場合は「提言」となる。
 そのように考えると、議員が「何かしら関わりたい」と思うときは「提案」になるのだろう。一方で、あくまでも第三者的な立場から言うときは「提言」になるのだと思う。どちらが良くて、どちらが悪いということを言いたいのではない。スタンスや政策の中身により、使う言葉は異なってくる。
 ちなみに、議員「提案」政策条例が一般的な言葉であり、議員「提言」政策条例は聞かない。つまり、議員提案政策条例である限りは、議員も提案した政策条例に関与していかなくてはいけない。しかし、少なくない議員提案政策条例は「提案したら終了」という状況である。これは議員提言政策条例である。議員提言政策条例には魂が入っていない。そして結果として、実効性もないことを指摘しておきたい。

●視察のポイント
(1)視察に関連する資料を事前に把握してから視察に行く。
(2)視察の対象である政策により生じた問題も把握しておく。問題が把握できたら、その問題の解決のための視点も確認しておく。
(3)視察先の自治体議会における質問を把握する。質問における執行部の対応を押さえておく。

●筆者が勧める視察先
 地方創生の成果を出していくためには、「産官学金労言」の重要性が指摘されている。これからの時代は、自治体単独で公的部門を担っていくことは難しい。自治体が様々な主体と協力・連携して公的部門を担当していく時代でもある。そこで昨今では、自治体は様々な主体と協定を結びつつある。次の3点は協定の中でも特徴的な取組である。視察に行くと様々な知見が得られると思う。なお、いずれも包括協定を土台に、様々な具体的な事業を展開している。

・戸田市(埼玉県)×ベネッセコーポレーション
 戸田市は株式会社ベネッセコーポレーションと教育の基礎的分野も含めて総合的に共同研究を進めるとの内容で協定を締結した。同協定は、①教育の調査研究、②教育政策の提言・改善、③そのほかの必要な分野、について協力するとした包括的な内容となっている。

・三芳町(埼玉県)×MPA
 三芳町とMPAは、地方創生や人材育成など政策分野で相互協力するための協定を締結した。MPAとは、中小企業診断士を中心とした士業の研究会である。現在100名余が在籍している。近年では、中小企業診断士や社会保険労務士、税理士等の「士業」が地域貢献への意識を持ちつつある。士業のノウハウを活用することにより、自治体政策を確実にしていくことができる。
MPAのホームページ http://mpa-consul.com/

・和泉市(大阪府)×KADOKAWA
 和泉市と株式会社KADOKAWAは、シティプロモーションに関する協定を締結した。具体的には、①和泉市の観光・産業・商店などの魅力発信、②和泉市のポスターやチラシなどの情報発信、③和泉市のPRイベントに関する支援、となっている。株式会社KADOKAWAの持つノウハウを活用することにより、和泉市のシティプロモーションをトータル的に支援していくことが目的である。

 上記以外にも、自治体と外部主体の協定は多方面にわたっている。関心を持ったらウェブなどを活用して、読者なりに調べてほしい。

●推薦する図書
 ・中室牧子『「学力」の経済学』ディスカヴァー・トゥエンティワン(2015年)
 最近、話題の図書である。「ゲームは子どもに悪影響?」、「教育にはいつ投資すべき?」、「ご褒美で釣るのっていけない?」などの問いに対して、データに基づき教育を経済学的な手法で分析している。同著は、明確な回答が書いてあるわけではないが、今まで「思い込み」で語られてきた教育の効果が科学的根拠から提示されている。分析力、調査力といった政策に必要な視点を学ぶのにも適している。

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