2015.09.25 予算・決算
第4回 決算審査の素朴な疑問
議会事務局実務研究会 林敏之
自治体議員の皆様、こんにちは。今回はまさに今行われている議会も多いと思われる決算の審査についてお話ししたいと思います。決算の審査は予算の審査と並び、議会での大切な仕事のひとつです。今回も今さら聞きづらい内容などについて取り上げていきたいと思います。
毎回特別委員会を設置するのはなぜ?

多くの自治体では決算を審査する特別委員会を設置しています(1)。決算を審査するために毎年設置するのであれば、常任委員会にすべきでは? という疑問を持つ方もいると思います。以前は複数の常任委員会の委員にはなれなかったため、決算を審査する委員会を常任委員会にしてしまうと、決算常任委員会の委員は他の常任委員会の委員にはなれませんでした。そのため、特別委員会として設置する自治体が多かったのです。
しかし、平成18年の地方自治法の改正により、常任委員会の所属制限が撤廃され、2つ以上の常任委員会に所属することが認められたため、特別委員会として設置する大きな理由はなくなってしまっているのが現状です。そのため、予算と決算を審査する常任委員会を設置する議会が少しずつ増えています。
(1) 70.8%の自治体が決算を審査する特別委員会を設置(平成26年中)している(全国市議会議長会「平成27年度 市議会の活動に関する実態調査結果(平成26年1月1日〜12月31日)」(平成27年8月)。
資料要求していいの?

決算の審査を行うに当たり、より深く執行状況を確認するため、委員長を通じて執行部側に様々な資料を要求することがあると思います。本来は委員会の中で資料要求を行うのですが、委員会が始まってから資料を要求していては審査に間に合わないため、多くの議会では決算審査の委員会が始まる前に議会事務局を通じて資料を要求し、決算の審査開始前までに資料がそろうような運用をしているようです。
ここでよく問題となるのが、大量の資料を要求する委員です。あくまで決算の審査に使用するための資料要求なのに、いくら何でも使い切れないだろうというような数の資料要求をする議員が多くの議会で見られるようです。資料要求をする議員とからすれば「1つの質疑をするための背景として多くの資料が必要になる」、「資料を要求したら疑問が解消されたので質疑をしなかった」など、資料要求の正当性があります。
しかし、実はこの資料要求は、執行部側としては答える義務はありません。資料を要求する際には「この要求には強制力はない」ということを認識しておく必要があります。ある新人の議員が「議員の要求する資料を出さないとは何事だ! きちんと全部出すべきだ!」と抗議してきたことがありますが、資料要求についてきちんと理解していれば、このような発言は出てこないのです。
資料を作成する職員も人間です。強制力があると勘違いして無茶な資料要求をする議員と、決算の審査に必要だと誰もが納得できる資料のみを要求する議員の、どちらの資料を優先して作成するでしょうか? 本当に必要な資料かどうかを吟味して要求することが、結果としていい資料を提供してもらえることにつながると思います。