2015.08.25 仕事術
第6回 視察のための質問ポイント(2)〜視察は具体的に聞く〜
本論に入る前に② 議会改革について一言
最近、議会改革をテーマに講演する機会が連続してあったこともあり、筆者が議会改革について思うことを問題提起を込めて述べたい。上記したように、議会の最終的な目的は「住民の福祉の増進」になる。その意味で議会改革は、当然「住民の福祉の増進」を達成するために実施することになる。
今日、様々な議会改革の取組がある。例えば、夜間議会や休日議会の開催、通年議会の開催、議会モニター制度の採用、専門的知見の活用、議員研修の充実、インターネット中継の導入、一問一答方式の採用など枚挙にいとまがない。筆者が講演をすると「タブレット端末を議会に導入しました!」や「Facebookの議会公式ページを開設しました!」と自慢げに伝えてくる議員がいる(この「自慢げ」とは筆者が個人的に感じたことである)。確かに、そういう議会改革もあるだろうし、何もしないよりはよいと思われる。ここで確認しておきたいのは、タブレット端末の導入やFacebookの立ち上げは「手段」にすぎないということである。しかし、これらの取組を目的化している議員が少なくない。この点は注意すべきである。
タブレット端末の導入やFacebookの公式ページ開設により、執行機関に対する監視機能が高まり、あるいは政策立案機能が強化されなくてはいけない。そして、最終的に住民の福祉が増進されなくては、どんな議会改革を進めても意味がないのである。最悪なのは、議会改革に議員の関心がいっており、本来の目的である住民に焦点が合っていない場合である。このような議会改革は、住民の福祉が減退する可能性があり、残念な議会の登場である(住民の福祉の増進という観点からは「残念な議会」である。そして議員の自己満足を満たした「独りよがり議会」の登場である)。
先日、筆者が「タブレット端末を議会に導入したことにより、執行機関の監視機能と政策立案機能のどちらが高まったのですか?」と尋ねると、「……」と無言の議員がいた。この「……」という回答は、どちらの機能が強化したのか分からないから答えられないというだけでなく、そもそも議会の役割を認識していないようであった。
今日では、議員が自分たちの役割を認識していないことによる、間違った方向の議会改革が少なくないように思われる。この点は注意していただきたい。
形容詞に気をつける
では本論に立ち返って、よい視察のための質問のポイントについてであるが、まず事前に提出する質問項目の検討や視察中のやりとりにおける注意点につき解説する。第一に「形容詞に気をつける」ことを述べたい。形容詞とは辞書において「国語の品詞のひとつであり、活用のある自立語で、文中において単独で述語になることができ、言い切りの形が口語では『い』、文語では『し』で終わるものをいう」と定義されている。例えば「高い」や「うれしい」などである。
視察に行った先で、「子育て支援策の効果はどの程度ありましたか?」という質問をして、視察先の担当者から「すばらしい成果が出ました☆」と回答があったとする。この回答の中の「すばらしい」が形容詞である。この「すばらしい」という語句は主観的であり、実に曖昧な表現である。当事者にとってすばらしくても、第三者が客観的に見たら「つまらない」成果かもしれない。単なる当事者の自画自賛かもしれない。そこで形容詞が出た場合は、その形容詞の意味を再確認する必要がある。具体的には「今おっしゃった『すばらしい』とは、定量的にはどのように示すことができますか」や「『すばらしい』という内容をアウトプット、アウトカムの両面から教えていただけますか」などである。形容詞の内容を具体的に聞くことがポイントである。
視察を実施する前には、基本的に質問事項を事前に送付することになる。その質問事項にも、当然形容詞は使わない。具体的に書き込むことが大切である。何事でもそうであるが、具体的に尋ねないと具体的な回答は得られない。具体的な回答が得られなければ、それらを活用することもできない。
視察時に頻繁に出てくる形容詞は「大きい・小さい」「良い・悪い」「難しい・易しい」「高い・安い」などである。この言葉が出たら、再度その言葉の持つ意味を詳しく聞くことが重要である。