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2015.08.10 仕事術

基礎から取り組む一般質問 〜「質」を支える3つのポイント〜

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(3)誰がための質問か
〈市民のための一般質問〉
 議員はそれぞれ、自らの政治課題や政策提案を掲げて選挙に臨み、それを支持した有権者に支えられている。だが、実際にその議員に投票したのは、数パーセントの「市民」であろう。議員の主張は、議員になったことで正統化されるのではない。その主張を議会で論じて認められ、我が自治体としての意思形成に反映させることによるのである。議会におけるこうした議論の活性化はすでに議会改革の最大の課題になっているが、改革が必要な現状の議会では、一般質問は直接に行政とその議論ができる重要な機会である。
 議会と行政は、二元代表制によって緊張・対峙(たいじ)している。だがそれは、その関係にあることで両者が「善政を競い合」(10)い、それが市民の益となるためであって、議会が行政を、行政が議会を単に攻撃することを前提としているわけではない。むしろ、市民のために「まちをよくする」ことが、議会と行政の共通の利益であり、そのために異なる視角と立場から取り組む政策主体同士なのである。もちろん、どうすれば「よくなる」のか、「よい」とはどういう状況なのか自体、議論が求められるのだが、それをまちの意思として決定するのは、むしろ議会というヒロバであり、議員にとってのまさにその機会が一般質問である。
 議員にとっては、行政からみえにくいかもしれない市民の現場から、政策つまり施策・事業をめぐる争点を提起することが、政治家としても議会の一員としても市民に対して責任を果たす重要な方途であって、それが、義務でないにもかかわらず、一般質問の質が議員に対する評価のひとつになっている理由なのではないか。
 一般質問は行政との議論の場だが、行政だけでなく、市民また同じく市民の代表である同僚議員に向けて行政のあり方を「問い質す」立ち位置に立つことが期待される。例えば答弁について「お礼」を言うことに違和感を示されることがあるが、相手の姿勢や答弁の内容を評価して受け止める表現にしてはどうか。
 一般質問の準備として行政にヒアリングし、疑問点や問題点が解消したのでその質問を取り下げるということがあると聞く。そのこと自体が悪いわけではないが、取り下げるかどうかの判断をめぐって、「まちで起こっていることとして市民が知る必要があるかどうか」を確認したい。一般質問は、本会議の中で行われ、その議事録には行政としての正式な答弁が記録される。自身の疑問が解消したかどうかだけでなく、市民にとっての必要性が、取り下げる前の判断基準となるべきだろう。

〈議論の難しさ〉
 一般質問のその瞬間では、議論する力が大きく成果を左右する。
 「八百長と学芸会」(11)と批判されたような過ぎた答弁調整は論外だとしても、まず、争点が何かを正確に受け取られなければ、かみ合う答弁は出てこない。一問一答であれ、一括質問であれ、何を問題としているかは通告書で伝わるように、通告書で伝えきれない場合に事前の調整で明確にするようにしておきたい。やりすぎはなれ合いに近づくので、「問題意識がきちんと伝わる」水準が目安だろう(12)
 導入が進む一問一答制であれば特に、議論で論点が膨らんだりそれたりしないよう、手元に「今回の一般質問で必ず聴きたいこと」「これができれば60点の出来というポイント」をメモしておくことも有効である。
 「話す力」も重要だが、議論においても「聴く力」は重要である。特に行政側の答弁が何を意味しているのか逃さず把握するために、メモをとることも効果的だろう。読み原稿だけでなく自身の質問の論点リストがあれば、それぞれにどんな答弁があったのかをメモし、再質問に備える助けになるだろう。聴くこと、書くことによって、話すことを支えることができる。そして何より、議論する機会を増すことが、話す力をつけることになる。

〈「納得」を引き出す議論という「対話」〉
 議会における一般質問は、限られた時間の中の出来事だが、その監査機能・政策提案機能は議場だけで完結するとは限らない。一般質問には議場をオンとすればオフがあって、現場の調査という意味でも、自らの提案についてその実行可能性を確認するという意味でも、質問の後のフォローとしても(13)、なれ合いという意味ではないオフでの活動は、争点を提起する政策主体の責任としても重要といえるだろう。
 一般質問が監査機能・政策提案機能を果たすということは、ごく小さなことでも、運営や認識をめぐって、問い質すことを通じて行政を変えるということである。二元代表の双翼として対峙しつつ「まちをよくする」ために議論することは、相手を撃破する討論性が不要でないとしても、議論を通じて「納得」を引き出す「対話」の側面を持ちうると考える(14)。実際に施策・事業を執行するのは行政側であり、だとすれば、何が問題でどう変えなければいけないのかを、消極的であれ積極的であれ内発的に理解(納得)しているかしていないかは、効果的な執行という意味でも鍵になる。特に政策提案質問では、一般質問という議論を通じて、問題状況や争点提起の背景にある問題認識について、共通の理解や認識を探ることが、まず達成したい一歩である。

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