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2015.07.10 女性と議会

第42回 出産に関する会議規則の一部改正について

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全国市議会議長会調査広報部参事 廣瀬和彦

Q平成27年5月28日に標準市議会会議規則(以下「市会議規則」という)の一部改正がなされたが、その概要はどのようなものか。

A(1)市会議規則及び参議院規則並びに衆議院規則の改正背景
市会議規則2条及び91条の欠席の届出の規定が平成27年5月28日に改正された。

【市会議規則2条】
① 議員は、事故のため出席できないときは、その理由を付け、当日の開議時刻までに議長に届け出なければならない。
② 議員は、出産のため出席できないときは、日数を定めて、あらかじめ議長に欠席届を提出することができる。

 改正されたきっかけは、平成27年5月26日に有村治子女性活躍担当大臣より「女性議員が活躍できる環境を整備して議会を活性化し、より良い住民サービスを実現するため、標準市議会会議規則において出産に伴う議会の欠席に関する規定を明確に設けていただくことを検討願いたい」旨の要請がなされたからである。
 なお、各市区議会において会議規則を改正した際には、市区議会における女性が活躍できる環境整備に対する取組を住民に理解していただくため、これを議会だより等で周知するよう通知がなされている。
 出産に関する規定については国会が先行して制定していた。
 すなわち、平成12年3月10日に出産を理由とする参議院規則の一部改正が、平成13年3月15日に衆議院規則の一部改正が行われ、出産に関する規定が制定されていた。

【参議院規則187条】
 議員は、事故のために数日間議院に出席することができないときは、予めその理由と日数を記した請暇書を議長に提出しなければならない。議長は、7日を超えない請暇については、これを許可することができる。7日を超えるものについては、議長は、議院に諮りこれを決する。
 公務、疾病、出産その他一時的な事故によつて議院に出席することができないときは、その理由を記した欠席届書を議長に提出しなければならない。

【衆議院規則185条】
① 議員が事故のため出席できなかつたときは、その理由を附し欠席届を議長に提出しなければならない。
② 議員が出産のため議院に出席できないときは、日数を定めて、あらかじめ議長に欠席届を提出することができる。

 参議院において出産に係る欠席規定が制定されることとなったきっかけは、橋本聖子参議院議員が参議院議員在職中に妊娠したことであり、参議院規則187条に、議員の請暇及び欠席届についての規定が置かれてはいたが、議員が出産のために議院に出席することができない場合の手続については明文で規定されていなかったことによる。
 そのため、超党派の参議院女性議員から男女共同参画杜会の形成を促す観点からも、国会議員の出産には特段の配慮が必要であるとし参議院規則改正に関する要望書が提出され、それにより参議院規則改正につながった。
 なお、参考までに標準都道府県議会会議規則(以下「都道府県会議規則」という)及び標準町村議会会議規則(以下「町村会議規則」という)も出産に関する規定が制定されている。

【都道府県会議規則2条】
 議員は、公務、疾病、出産その他の事故のため出席できないときは、その理由を付け、当日の開議時刻までに議長に届け出なければならない。

【町村会議規則2条】
① 議員は、事故のため出席できないときは、その理由を付け、当日の開議時刻までに議長に届け出なければならない。
② 議員が出産のため出席できないときは、日数を定めて、あらかじめ議長に欠席届を提出することができる。

(2)市会議規則2条2項の日数を定める際の基準
 市会議規則2条2項では、議員は、出産のため出席できないときは、日数を定めて、あらかじめ議長に欠席届を提出することができると規定されているが、この日数は何を基準に考えるべきかであるが、地方公務員の一般職職員については地方公務員法上特に規定がないが、各地方公共団体が条例において一般職の職員の休暇に関する条例及び同規則で特別休暇として規定している。すなわち、一般的には労働基準法65条が準用され、産前6週間、産後8週間の休暇を取得することができる。

【労働基準法65条】(産前産後)
① 使用者は、6週間(多胎妊娠の場合にあつては、14週間)以内に出産する予定の女性が休業を請求した場合においては、その者を就業させてはならない。
② 使用者は、産後8週間を経過しない女性を就業させてはならない。ただし、産後6週間を経過した女性が請求した場合において、その者について医師が支障がないと認めた業務に就かせることは、差し支えない。

 ただし、特別職の地方公務員である地方議員には労働基準法の適用がないため、労働基準法65条は直ちに適用とならない。
 しかし、議員も市会議規則2条2項において出産を理由とする欠席をするに当たっては、労働基準法65条の規定を参考として日数を定めて議長に欠席届を提出するのが適当であると解される。

(3)出産における欠席の対象者
 市会議規則2条2項における出産のため欠席することができる議員の範囲は、出産する女性議員本人しか適用とならない。これは(1)に述べたとおり「女性議員が活躍できる環境を整備して議会を活性化し、より良い住民サービスを実現するため、標準市議会会議規則において出産に伴う議会の欠席に関する規定を明確に設けていただくことを検討願いたい」とする有村大臣の要請を受けて規定されたものであるため、あくまで出産する女性議員に限定され、配偶者である議員の出産の立会い等における欠席までを想定したものではない。それゆえ、配偶者等が出産の立会い等のため欠席する場合は、市会議規則2条1項の規定により、事故のため出席できないとして欠席届を議長に提出する必要があるといえる。

(4)市会議規則において衆議院の規定を参考とした理由
 市会議規則において出産に関する規定を改正するに当たり、国会における規定を参考とすることとされたが、最終的に衆議院の出産に関する規定を参考として規定した。
 参議院の規定を参考としなかったのは、参議院規則187条で「公務、疾病、出産その他一時的な事故によつて議院に出席することができないときは」と規定されているとおり、出産も事故の一種として見られてしまうこととなるからである。
 一般的に議会用語における事故とは、議員が作為、不作為を問わず会議に出席することができない一切の事情をいい、出産も議会用語における事故に含まれることとなる。
 しかし、一般用語における事故とは、思いがけず起こった悪い出来事を意味し、会議規則に事故の一種として規定してしまうと、女性による出産が一般用語における事故の意味を連想させるおそれがあり不適切であるとの考えもあったため、事故の一態様と捉えられないように参議院規則ではなく、衆議院規則を参考とし市会議規則を改正した経緯がある。

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