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2015.05.25 仕事術

第3回 良い視察先と悪い視察先~正しい視察先を選定するための視点(2)~

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一般財団法人地域開発研究所 牧瀬稔

 前回は「先進事例は必ずしも成功事例ではない」ということについて言及した。周囲から先進事例といわれていても、それは単に早く取り組んだだけの「先進事例」ということもある。先進事例は、実は失敗事例の場合もあることを指摘した。
 また、国立社会保障・人口問題研究所が発表している将来推計人口を活用すれば、未来の自分の自治体に視察に行くこともできることを紹介した。
 今回も引き続き視察先を選定するに当たり、正しい視察先を見つけるための視点、心構えを紹介する。

視察には事前の政策研究が欠かせない

 本当は失敗事例であるのに、単に「先に始めた」という理由だけで視察に行ってしまう場合が多い。視察に行った本人が失敗事例ということに気づかないことが多い。その理由は、政策研究ができていないからである。政策研究のない視察は、観光や旅行である。「視察」というからには、事前に政策研究をしておく必要がある。そして政策研究は、政策形成サイクルの中で考えることが大切である(政策形成サイクルについては後述する)。
 政策研究の意味を確認する。辞書で調べると、政策とは「目的を遂行するための方針。問題を解決するための手段」と定義されている。研究とは「物事を詳しく調べたり深く考えたりして、事実や真理などを明らかにすること」と記されている。これらの意味から、端的に政策研究を定義すると、「目的遂行の方針や問題解決の手段を決定するために、詳しく調べたり深く考えたりして、方針や手段を明らかにすること」となる。
 雑誌をパラパラめくって何げなく視察先を見つけるのではなく、政策づくりに取り組むのならば「何が問題か」を明確にし、「その問題を解決するために望ましい事例はどこか」と、少しくらいは政策研究をしてから視察先を決める必要があるだろう。温泉があるからとか、夜が遊べるからなどの理由で視察先を決定するのは、基本的によくない(「基本的に」と書いたのは、「温泉」や「夜の遊び」が視察の対象となる場合もあるからである)。

政策形成サイクル(政策づくり)とは何か

 視察は政策形成サイクルにおける「政策研究」の一手段である。政策形成サイクルは政策研究だけではなく、政策立案、政策決定、政策実行、政策評価と続いていく(図)。それぞれが相互に作用して政策形成サイクルは成立している。以下では、政策形成サイクルを簡単に紹介する。

図 政策形成サイクル図 政策形成サイクル

 政策形成サイクルは、民間企業における経営活動のPDCAサイクルが土台となっている。PDCAサイクルとは、民間企業が経営を展開する際に、「①計画」(Plan)を立て、「②実行」(Do)し、その後「③評価」(Check)に基づいて、「④改善」(Action)を行うという工程を継続的に繰り返す一連の仕組みである。
 政策形成サイクルとは、①課題や問題の解決のために現状分析等を踏まえ必要とされる様々なアイデアを検討し(「政策研究」)、②複数の政策案の中から最適案を選択し(「政策立案」)、③政策案を決定する行動をとり(「政策決定」)、④決定された政策が実施に移され(「政策実行」)、⑤政策展開の結果、得られた成果を評価する(「政策評価」)、という一連の流れ(サイクル)である。そして⑤の政策を評価した結果を、さらに①の現状分析に反映させることにより、政策づくり(政策形成力)をより進化・深化させる能動的な仕組みである。

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