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2015.05.11 女性と議会

自治体議会の女性議員と産休

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東京大学名誉教授 大森彌

 しばしば、地方議会の議員構成は多様な民意を反映するものとなっていないという指摘がなされるが、その理由のひとつに女性議員の少なさが挙げられる。女性の議員が少なければ、女性の視点や利害が議会に反映しにくいと考えられているからである。

女性議員の少なさ

 2003年、小泉内閣のときに、女性のチャレンジ支援策として、「社会のあらゆる分野において、2020年までに、指導的地位に女性が占める割合が、少なくとも30%程度になるよう期待する」としていた。現在の安倍総理も「2020年までに指導的地位にいる人の3割を女性にする」と内外に公言している。自治体議会の女性議員の数は増えてきてはいるが、その割合はまだまだ低い水準にとどまっている。
 内閣府男女共同参画局・2015年1月作成の「全国女性の参画マップ」によると、2013年12月31日現在、地方議会における女性議員は、都道府県議会の現員2,648人中233人で8.8%、市区議会の現員1万9,852人中2,705人で13.6%、町村議会の現員1万1,398人中994人で8.7%である。地方議員合わせて3万3,898人のうち、女性議員は3,932人、割合にして11.6%である。
 しかも、女性議員ゼロの自治体議会も相当数あるのである。統一地方選を前に、「朝日新聞」が2015年1~2月、全国の都道府県議会と市区町村議会に1月1日時点の状況についてアンケートと直接取材によって得た全議会からの回答結果によると、都道府県議会で女性議員ゼロのところはないが、全国の1,788議会のうち、49市、330町村、合計379の市町村議会には女性議員が1人もいない。
 政党が擁立する候補者や議席の一定割合を女性に割り当てる「クオータ制」は、欧州では定着している。それは女性の議員や候補者を増やすためには有効である。女性議員を増やすには個人の力では限界がある。政党が女性候補者の育成や支援に組織的に取り組む必要がある。

女性議員への偏見とマタハラ

 我が国で女性議員が増えない背景として、国でも地方でも「政治は男の世界」という見方が根強いことが挙げられる。男が特段に政治に向いているとはいえない。しかし、依然として、地方議員の中には、女性議員を蔑視しているとしか思えない言動をする議員が絶えない。
 都道府県議会の中では最も女性議員の比率が高い東京都議会(現員127人中25人、19.7%)でセクハラやじが問題になったことは記憶に新しい。東京都では晩婚化が進んでいる現状を説明し、都の結婚・妊娠・出産に対する取組について指摘していた女性都議に対し、議場から大きな声で「そんなことをいう前に、おまえが早く結婚しないのかっ!」というやじが飛んだ。女は結婚・出産をして一人前だ、それもできない女がウダウダいうな、これが本音なのであろう。
 女性議員の妊娠・出産に関しては、会派内外から「産むのなら議員を辞める覚悟があるんだろうな」、「立候補するならタイミングを考えろ」、「無計画な出産だ」、「税金で出産して」といったマタニティ・ハラスメントを受けるという。
 男だらけの議会では、議員になった女性が妊娠・出産することがあり、それには産休・育休制度が必要であるという発想が出てこない。議会運営のシステムそのものが、出産の可能性がある女性が議員になることを前提としてつくられてはいないのである。

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