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2015.05.11 条例

第20回 「災害時の議会の役割」を議会基本条例にどう追加するか

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回答へのアプローチ

 災害時における議会の役割を考えるに当たって、どうしても知っておかなければならないのが、東日本大震災で被災した議会の経験です。この経験を集めたレポートがあります。それが、都市行政問題研究会「『都市における災害対策と議会の役割』に関する調査研究報告書」(2014年2月)です。研究会加盟86市及び大規模災害被災自治体33市の議会(合計119市議会)を対象にした調査結果の分析と被災自治体の議会での現地レポートからなっています。全国市議会議長会のウェブサイト(「活動報告」)から全文を見ることができます。
 このレポートなどを見ると、議会ができること、議会がするべきことが見えてきます。①平時(災害前)、②発災直後(初動期)、③初動期経過後、④復旧・復興期に分けるとおおよそ次のようになります。

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 なるほど、議会として果たすべき役割はいろいろあります。ただ、議会基本条例で議会の役割を書き込もうとする場合には、これらのうち、議会として何が大事かという判断はしなければなりません。
 古い議会や古い議員は、困ったときには「オールマイティー発言」で逃げようとします。「市民を守るために迅速に行動します」みたいなものがそれです。どんなに力を込めて訴えようが、こうした条文には議会の自己満足以上の内容はありません。平時についてなら、「意味がなくても害がない」かもしれませんが、この場合は災害時です。行動の基準もなく議会や議員が動けば、それこそ執行部の「妨げ」になることだってあるはずです。事実、被災自治体の職員の口からそうした議員の「被害報告」も寄せられています。ですから、Bはやめておきましょう。
 だんだんと回答に近づいてきましたが、災害時に議会がまず心がけることは、執行部の側面支援と議会としての次の動きに備えることでしょう。となると、最初にすべきことは、議会や議員が災害時にどのように動くかという行動の基準を定めることということになります。
 「議会の業務継続計画(BCP)」という言葉を耳にすることが多くなりましたが、そこまで本格的でなくとも、「災害時の議会・議員の行動計画」は定めておくべきだと思います。そこでは、議会機能の再開に当たっての議員や職員の確保、そして、議会がバラバラにならずに執行部と情報を共有したり、対応を提案したりするための「組織」を用意するのもいいでしょう。次の香川県の宇多津町議会基本条例は、そうした議論を基に定められたものと思われます。

○宇多津町議会基本条例
 (災害対策本部)
第20条 議会は、災害時には、議会災害対策本部を設置する。
2 災害対策本部の設置、組織、運営等に関し必要な事項及び議員の行動基準については、別に定める。

 回答としてはAとしたいと思います。Cは「なし」というわけではありません。現に横浜市議会基本条例では、これに近い内容を規定しています。ただ、議会としての役割を十分議論した上でないと難しいでしょうから、「災害に強い議会を目指す4期当選さん」の議会では難しいかもしれません。また、後でお話しするように、こうした内容なら、むしろ災害対策条例に「議会の役割」として組み込むのがいいのかもしれません。

実務の輝き・提言

 「議会基本条例に議会の役割も加わった。よかった、よかった」ではいけません。これは新たな段階へのスタートなのですから…。災害は多くの住民の関心事です。議会全体が住民と一緒になれる事柄です。もちろん、被災直後の被災者の救援や応急の復旧作業など「執行」の場面ではなかなか議会の出番はないかもしれません。ただ、そうした場面でも「議員」が地域の住民とともに活動することは重要ですし、「議会」としては組織的に災害対策本部と情報共有することは重要です。被災状況や防災上の問題点を踏まえて、今後のまちづくりに生かすことができるからです。もっといえば、「災害が起こってから」ではなく、地域防災計画を定める際などから議会が防災に関わっておけば、災害防止や復旧復興についての議会の役割は重くなります。地域の問題点や住民の不安は議員の方が詳しいことが多いものです。ここは議会の力が問われる場面といえるでしょう。こうした点から、四日市市議会のように地域防災計画を議決事項に加えるのもひとつの方法でしょう。

○四日市市議会基本条例
 (議会の議決事件)
第10条 議会は、行政に対する監視機能を強化するため、地方自治法(略)第96条第2項の規定により特に重要な計画等を議決事件として加えるものとする。
2 前項の規定に基づく議会の議決すべき事件については、次の各号に掲げるとおりとする。ただし、軽微な変更を除く。
 (1) 災害対策基本法(略)第42条第1項に規定する地域防災計画の策定及び変更に関すること。
 (2) 水防法(略)第33条に規定する水防計画の策定及び変更に関すること。
 (3)~(6) 略

 さらに議会の防災意識が高まると、平時から復旧・復興期に至るまでの議会の関わり方に向き合うことになります。そうなると、議会が主導して、災害対策条例を制定する動きへとつながるのも自然の流れです。岡崎市議会、和歌山市議会、大津市議会などがそうした例といえます。
 「災害に強い議会を目指す4期当選さん」の議会は、人間の進化でいえば、2本足で立ち上がったばかり、さらなる「進化」を期待しています。

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