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2015.04.27 仕事術

第2回 良い視察先と悪い視察先~正しい視察先を選定するための視点(1)~

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『自分の自治体の未来』に視察に行く

 『自分の自治体の未来に視察に行くことも可能である。それはタイムマシンに乗って……という夢見的なことではない。この視察は、筆者が関わりを持っている戸田市等で行った。戸田市政策研究所(戸田市が設置したシンクタンク。所長は副市長である)は、以前「急速な高齢化が戸田市へもたらす影響に関する研究」(2011年3月)を実施した。
 同研究の目的は、2035年の戸田市が抱えるであろう問題を把握することであった。そこで、まずは国立社会保障・人口問題研究所の将来人口推計の結果から、2035年における戸田市の将来人口推計と人口3区分を把握した。次いで現時点において、その数字に近い自治体を探した。するとK市をはじめ、いくつか該当する自治体があった。つまり、それらの自治体は、2035年の戸田市の状況に近いと予測される。そこで戸田市は、K市に視察に行くことにした。これが「自分の自治体の未来に視察に行く」という意味である。
 実際、K市に視察に行くと様々な発見があった。特に2035年の戸田市の姿が、視察に行った職員の目の前に現実的に現れていることのインパクトは大きいものがあった。また、K市の様々な行政分野の担当者からヒアリングすることにより、今後戸田市において発生するであろう問題もおおよそ予想できた。そして、その問題が発生しないように、先手を打って政策を実行することが可能となった。
 先進事例を見るだけが視察ではない。様々な観点から、視察先を選定していくことにより、政策づくりに生かしていくことが望まれる。次回も視察先選定の視点を紹介する。

視察先選定のポイント
(1)先進事例が成功事例とは限らないことを知る。先進事例は失敗事例かもしれない。
(2)成功事例はベンチマーク(見本)として採用し、失敗事例は反面教師として活用する。
(3)流行に安易に流されない(特にカタカナを使った取組には注意が必要である)。
(4)政策研究により「視察により何を知りたいのか」を明確にする。
(5)将来人口推計等を活用することで、『自分の自治体の未来』に視察に行ける。

●筆者が勧める視察先
 最近は、多くの自治体が「地方創生」に染まっている。そして地方人口ビジョンや地方版総合戦略の策定に取り組んでいると思われる。そこで「人口」という観点で考えると、下記の自治体に視察に行くと、何かしら発見があるかもしれない。いずれも25歳から34歳の人口を大きく増加させている。
 ・流山市(千葉県)
 ・吉川市(埼玉県)
 ・東大和市(東京都)
 流山市は「母になるなら流山市。」をキャッチフレーズとしてターゲットを絞り込んだ定住人口の増加策を展開している。吉川市は吉川美南駅の駅前開発をチャンスと捉え、人口の増加に向けて取り組んでいる。東大和市も25歳から34歳の人口を大きく増加させている。

●推薦する図書
 本文で強調した「先進事例は成功事例ではない」という思考は「うがった見方」から登場する。この「うがった見方」を身につけるのは、次の図書が参考になる。とても読みやすい内容でもある。
 ・パオロ・マッツァリーノ『反社会学講座』イースト・プレス(2004年)

 余談であるが、「うがった見方をする」の意味は、「物事を深く掘り下げ、本質を的確に捉える」や「隠れた真相を見抜く」という意味である。そのため「うがった見方」は良い意味(言葉)である。しかし、多くの人が悪い意味として捉えている。

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