2015.04.27 仕事術
好感力アップの情報戦略 議員のためのメディア・トレーニング(下)
身だしなみを整える
日本の男性は、残念なことに身だしなみに無頓着な方が大変多いのです。身だしなみというのは高級な服を身に着けることではなく、その場にふさわしい服を正しく身に着けるということです。例えば、記者会見と記者懇談会の服装について考えてみましょう。記者会見は公式会見ですから、ダークスーツにネクタイ、スーツのボタンは必ずかけておきますが、懇談会は非公式会見なのでグレーのスーツでもよい、ノーネクタイでもよい、スーツのボタンはかけなくてもよい、といったことです。また、アルマーニの服はジゴロ服なので公式の場では避ける、といったマナーの基本知識も必要です。
日本人はスーツをオーバーサイズにしてしまっている方が非常に多いです。オーバーサイズになると、痩せ型の体型の人は痩せ型が余計に目立ち、大きめの顔の人は余計に顔が大きく見えてしまうのです。
ビジネススーツではVゾーンの演出は重要ポイントです。スーツとシャツのバランスから、ネクタイの太さを調整するくらいのセンスは欲しいです。Vゾーンが地味になってしまった場合には、白のポケットチーフを入れるだけでぐっと品良くなります。シャツの袖がスーツから数センチ出ているだけで、清潔感はずっと高まります。ビジネススーツの基本をしっかりと身に付けて記者会見に臨んでください。
テレビ出演の場合に気を付ける服装
テレビカメラの前に立つ場合には、さらに別の配慮が必要になります。テレビの走査線にぶつからないように、スーツは、ストライプ、チェック、小さい柄のものは避けるようにします。また、ネクタイは、チェックや柄物を避けなければなりません。スタジオに入る場合は、下から映される場合もありますので、靴下は、深く座って足を組んでもスネが出ないよう長いものにします。靴下の柄物も避けましょう。
オーデコロンは腰から下に付ける
オーデコロンをぷんぷん匂わせている男性がいますが、品格を下げるので注意してください。部屋中オーデコロンの香りがまん延していると、「ああ、この人は女性にはだらしないな」という印象を与えてしまうでしょう。
オーデコロンは品良く身に付けましょう。女性は首や耳の後ろ、両手首の内側に付けますが、男性は同じ場所に付けてはいけません。特に脇の下は絶対にいけません。男性の場合、オーデコロンは腰から下に付けるのがエチケットです。
オリジナルの演出を考える
日本における歴代首相の中で突出した演出力があったのは中曽根氏と小泉氏です。
中曽根氏が演出家の浅利慶太氏を常にそばに置いて国民に分かりやすい演出に工夫を凝らしていた話は有名です。特に外交で効果を発揮しました。総理大臣として初めて参加した1983年の米国ウィリアムズバーグサミットでのこと。会談場から記念撮影場所までの間ブロークン英語で必死にレーガン大統領に話しかけ続け、ついにホスト役レーガン大統領の隣での記念撮影に成功しました。それまでサミットでの撮影は日本の歴代首相は隅っこでしたから、この1枚の写真は、「一流の国際政治家・中曽根康弘」というイメージを国民に強く植え付けることができたといえます。レーガン大統領来日時にも浅利慶太氏の演出力を使い、2人でちゃんちゃんこのようなものを着て現れました。テレビ映りを意識してのことです。小泉氏の場合には天性のセンスがあったことに加え、飯島秘書官というネガティブ情報のコントロールに強いスタッフが彼を支えていました。
ここで誤解がないように明確にしておきたいことは、好感を持ってもらうということは相手に媚を売ることではありません。自分の信念や思いを言葉だけでなく見え方を意識し全身で伝える必要があるということです。メディア・トレーニングは、インタビュー対応力を身に付けるだけでなく、自分が人からどのように見えるのか、伝えたいことは伝わっているのか、あるいは効果的に伝えるにはどのようにしたらよいか、を考える場でもあります。伝えたいメッセージの中身、メディアを通じて届けたい相手、起こしてほしい行動を具体的にイメージしながら、オリジナルの演出を考えてほしいと思います。
メディア・トレーニングプログラム例
10:00-10:45 レクチャーⅠ メディアリレーションズ
マスコミの特性、関係のつくり方、インタビュー対応 11:00-12:00 スタイリング
スーツコーディネイト、メガネ・髪型アドバイス 13:00-13:45 模擬インタビュー&講評 1回目
ビデオカメラに収録して改善策を提示 14:00-14:45 模擬インタビュー&講評 2回目
ビデオカメラに収録して改善評価 15:00-15:45 レクチャーⅡ クライシスコミュニケーション
緊急事態発生時の初動、説明責任の果たし方ポイント、公式見解書(ポジションペーパー)の書き方、謝罪の仕方、NGワード、誤報対応、過剰報道対応 16:00-16:45 模擬緊急記者会見&講評 1回目
ビデオカメラに収録、NGワードチェック 17:00-17:45 模擬緊急記者会見&講評 2回目
ビデオカメラに収録して改善評価