2015.04.27 仕事術
好感力アップの情報戦略 議員のためのメディア・トレーニング(下)
広報コンサルタント/日本リスクマネジャー&コンサルタント協会理事 石川慶子
口元と歯、笑みについて
一般的に、人は答えにくい質問を受けると笑みを浮かべてしまいがちです。平時ならともなく、事件・事故といった場合、記者からすると「何でこんなときに笑っているんだ」、「真剣に質問しているのだから、笑っている場合ではない」と反発が高まります。困ったときに自分の表情がどのようになるのかチェックし、笑みを浮かべるようなら意識やトレーニングで必ず直しておくべきです。
安定した視線のつくり方
緊張すると目があちこちに行ってしまう人は実に多いのです。安定した視線をつくるコツをお教えしましょう。
記者が質問をしているときなど、自分が聞き手のときは相手の顔を見るようにします。話し手に回る場合にはじっと相手の顔を見るよりは、適度に外し、話の切れ目に相手の目を見るようにします。そうすれば、話の一区切りが終わったことを伝えることができ、同時にこちらの意図が伝わっているかどうかを相手の表情から読み取ることができます。インタビュー対応の場合には、このように適度に視線を外してもよいですが、記者会見のときには、記者席を見る方がよいでしょう。視線を落ち着かせるには、会見席で味方を見つけること。うなずいて聞いてくれる記者を見つけてその人に語りかけるようにすれば、落ち着いて記者席を見ながら話をすることができるのです。記者会見に慣れていない場合には、最初から記者席に関係者を座らせ、時々うなずくように指示をしておきましょう。これだけでも発表者は随分気持ちを落ち着かせることができるのです。
テレビ視聴者を意識してメッセージを発信したい場合には、記者席ではなく、テレビカメラに目線を合わせて語ります。その方が視聴者にダイレクトにメッセージが伝わります。米国大統領はテレビカメラを使った国民への呼びかけを頻繁に使います。日本の首相はライブ中継で「国民の皆さん!」と呼びかけながら、目線は記者席で下向きである場合が多いため、ちっとも心に響かないのです。
うそは手と脚に出る
うそをつくと目の動きで分かる、と先ほど説明しましたが、目以外の体の動きからも分かってしまいます。
ある心理学者が行った欺瞞を見抜く実験の結果を紹介しておきましょう。人のうそを見抜くときにどこを手がかりにするのか、さらに結果としてどこを手がかりにした人の正解率が高いのかを実験したところ、手がかりにするものとしては「発言内容」、「話し方」と回答した人が最も多かったものの、実際には、手の動きや脚の動きを手がかりにすると回答した人の方の正解率が高かった、という結果です。これは「手の動き」、「脚の動き」に、話し手の本心が出やすい、ということを意味します。
プロカメラマンは心理学を勉強しているとは限りませんが、彼らは直感的にそのことを知っているようです。実際、プロカメラマンは動きをとらえます。ペンを手でいじくったり、書類を手で丸めたりするアクション、足などの体の動きにすぐに反応してシャッターを切ったり、カメラをズームアップして映し出すのです。
これに対する対策を考えましょう。不祥事にうそは許されませんが、国家機密にかかわることであれば、戦略上回答を避けなければならない場合もあります。そのような質問が想定される場合には、インタビューや会見場は、手が隠せる、脚が見えない机にするなど会場設営を工夫すればよいのです。