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2015.03.23 選挙

議会選挙の低投票率

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投票に行っても行かなくても、どうせ結果は同じ

 単純に言って、ある個人が投票をしても、選挙結果に影響を与えることは、ほとんど不可能である。自治体議会選挙レベルでは、当選ラインが非常に低いこともある。例えば、2013年9月の青ヶ島村議選挙では、最低当選が13票で、次点が8票、有権者数138人なので、これならば1票で多少の影響はあるかもしれない。しかし、通常は、百票から千票単位となると、ほとんど効果はゼロである。だから、「どうせ投票しても結果は変わらない」という感覚は、ある意味で、数学的に正しい。    
 だから棄権することは、個々人の立場から見れば合理的である。全ての個々人がこのように判断すれば、全員が棄権する。ところが、自分以外の全員が棄権すれば、自分の1票は決定的な影響を持つ。そこまで極端ではなくとも、多くの人が棄権すれば、自身の1票の実質的な価値は高まる。しかし、そう思って多くの人が投票に行くようになると、選挙結果に影響を与えられなくなる。
 このような堂々巡りになる。結局、選挙に行くべきか行かないべきか、どちらが合理的かは、他人の行動をどのように予測するか次第ということになる。皆が行くなら行っても仕方がないし、皆が行かないなら行くとチャンスがある、というわけである。結局、個人のレベルの話ではないということである。

皆に合わせて行動

 ところが、現実には、投票ごときに、何が有利に作用するかなどと、いちいち計算して判断する人は少ないようである。立候補者などは、自身の1票が当落を左右しないと分かっていても、あたかも宝くじを買うように、投票に出かけるのが普通である。そこには個人レベルの合理的判断はない。
 一般住民はというと、通常、何となく争点がクローズアップされ、何となく関心が高まり、何となく候補者同士が拮抗(きっこう)しているという予測が出ると、そして、何となく皆が行くようになると、何となく投票に出かける。そうでなければ、何となく投票に行かなくなる。皆が行くなら行くし、皆が行かないなら行かない、というわけである。上述の個人レベルの合理的人間像とは、正反対の行動をするようになる。投票とは、一種の社会常識や流行に従った行動に含まれ、皆の行動期待と一致させるわけである。
 もっとも、皆と同じような行動をすることに何の意味があるかというと、大変に不思議な現象である。皆と同じような行動をしないと、社会的に白眼視されるならともかく、投票に行こうと行くまいと、ほとんど知れ渡ることではない。しかも、近年のように、投票率が5割となれば、行く人と行かない人が半々であって、どちらにも付和雷同できる。要は、身近な人の行動に合わせるということであろう。

おわりに

 そもそも人はなぜ投票に行き、行かないのか、そしてそれは誰にとって問題なのかは、なかなか難しい問題である。しかし、そのような面倒なことは考えなくてもよいかもしれない。むしろ、投票権や選挙は、集合財あるいはコモンズである「空気」のようなものであって、存在するときには大事なものと気づかないが、涸渇(こかつ)して重要であることに気づき、消失してしまってからは取り返しのつかないことになるものであろう(4)
 しばしば、棄権による低投票率は、投票権や選挙を軽視していると批判される。しかし、低投票率が投票権や選挙を軽視することと同じであると認めると、低投票率のところでは投票権・選挙権を剥奪してもよい、ということになりかねない。投票権の重要性は、投票するという行動によってのみ確認されるのではなく、棄権する権利をも付与していることによっても、確認されるわけである。低投票率への不信感や批判論が、投票権というコモンズ自体への価値を棄損しないようにすることが、低投票率の社会では肝要である。


(1) 地方自治法の公布は1947年4月17日、施行は同年5月3日である。施行日は憲法と同日である。したがって、第1回統一地方選挙は、地方自治法施行前である。
(2) http://www.akaruisenkyo.or.jp/070various/073chihou/674/(2015年3月4日アクセス)。
(3) もっとも、こういう為政者は、勝利した選挙結果は受容するが、敗北した選挙結果は認めないだろう。
(4) コモンズであるならば、「コモンズの悲劇」を招かないように規制をするということになりそうである。つまり、投票を義務化する。しかし、投票も棄権も意思表明と看做(みな)せば、選挙権・投票権は、常に100%の率で活用されていることになり、「コモンズの悲劇」は起きようがない。これならば、義務化は不要である。

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