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2015.03.23 選挙

議会選挙の低投票率

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ご挨拶

 雑誌形態及び紙面がリニューアルされた関係で、前連載「ギカイ解体新書」から連番を付せば、今回は第27回ということになる。もっとも、それ以前には「自治体議会改革」で計12回の連載を行ったこともあるので、事実上は第39回ということもできる。とはいえ、紙幅も掲載間隔も変更するので、新生連載ということになろう。
 相変わらず民間消費需要が落ち込んでいるこのご時世で、リニューアルでリストラされなかったのは、ひとえに、読者諸氏の陰ながらの応援の賜物である。ありがたく機会を頂戴するとともに、今後のご愛読をお願いする次第である。

はじめに

 2015年4月は、4年ごとの統一地方選挙である。戦後、新たな憲法・地方自治法の下で、あるいは、より正確には、新たな憲法・地方自治法の施行を前提に、第1回の新制自治体の選挙が行われたのが、1947年4月である(1)。戦後の新制自治制度が全国同時開始という意味では、自治体の選挙日が統一されているのは、ある意味で自然のことである。しかし、その後、首長の死去・辞職や、市町村合併などにより、首長選挙は統一地方選挙から外れることも多くなった。結果的には、統一地方選挙とは、主として地方議会選挙になっているのである。  
 そこで、近年問題となっているのが、傾向的な投票率の低下である。明るい選挙推進協会のデータによれば、図のようになっている(2)。戦後第1回目では7~8割であり、それが第2回目では市町村レベルで9割を超えた。ところが、その後、ほぼ一貫して長期低落となり、前回第17回(2011年4月)は、東日本大震災という事情はあるにせよ、5割内外にまで落ち込んでいる。さらに、統一地方選挙とは別日程で行われる選挙となると、2割から3割という低投票率も、珍しいことではなくなっている。今回の統一地方選挙では最低投票率を更新する自治体が、続出するかもしれない。  
 そこで、第1回目として、低投票率について、検討してみたい。
図 統一地方選挙の投票率推移図 統一地方選挙の投票率推移

低投票率は誰にとって何が問題か

 一般に、低投票率は問題であると思われるし、中学校公民教科書でもそのように解説されているようである。多くの住民が投票に行かないことは、選挙で当選した首長・議員に、住民から負託されたという民主的正統性が充分ではないことにつながり、したがって、当選した首長・議員による決定にも、民主的正統性が欠損することにつながるからである。決定に正統性がなければ、自治体の決定に住民が従う根拠もなく、民主主義を信奉する首長・議員や行政職員という為政者としては、困るであろう。  
 もっとも、首長・議員という為政者の中には、「選挙で民意は示されたのだから、ともかく選挙で勝利したらやりたい放題やる」と考えている人もいよう。さらにいえば、為政者が民主主義を信奉しているとは限らず、ともかく権力を握りさえすれば、どうでもよいと思っているかもしれない。こうした為政者からすれば、低投票率それ自体は問題ではなく、自分たちが勝利できる投票率が望ましいということになる。低投票率が勝利に寄与すれば低投票率をありがたいと思うだろう(3)。  
 住民が、民主的正統性の乏しい首長・議員の決定に従わなくてよい、と勝手に判断して行動すれば無政府状態になり、弱い立場の住民は困ることになる。また、正統性が乏しいと住民が解釈しても、実際の行政や法執行は粛々と行われるから、いくら「正統性がない」と文句を言っても、後の祭りである。棄権することは結局、制度的には、投票した人の意思に白紙委任することになるからである。  
 選挙の結果だけが民主的正統性を具備するものではなく、選挙後の首長・議員たちが、さらに公開で議論を尽くすこと(熟議)が民主的正統性をもたらすという観点からは、選挙だけで民主的正統性を与えかねない高投票率は、かえって危険かもしれない。しかし、選挙で高投票率であっても、選挙だけで全てが決まるわけではないという代表制民主主義の観点からは、高投票率は正統性を高めるものではない。逆に低投票率によって、民主的正統性を住民の手元に留保することで、正統性が高まるわけでもなく、簡単に低投票率を推奨できるわけでもない。

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