2015.01.10 広報広聴
第18回 読んでもらえる「議会だより」をどうつくるか
提言
議会基本条例を制定した際、選挙後の議会、広報広聴委員会が特別委員会(常任委員会)に格上げされた際、そんな機会を捉えて、議会事務局は、議員自身が議会だよりを編集するよう提案してみましょう。
同じ一般質問を取り上げるにしても、議員が編集する場合にはメリハリがつけられます。「うちの会派ではA議員がよく勉強していたので大きく取り上げたい」というのも議員が編集するからこそできることです。また、質問事項の重複の調整も議員が編集していれば比較的簡単です。こうしたことが記事のメリハリにつながります。
議員が自分の掲載部分と他の議員との扱いの公平性だけにしか興味がない。それは議会の中ではともかく、住民との関係では通用しない論理です。議会報告会においては、それぞれの議員が議会の一員として住民に向き合うことが求められました。議会だよりにおいてもこの姿勢は全く同じなのです。
さらに改善点を3つ挙げれば、まず議会だよりのスペースに「ゆとり」をつくることです。議員同士のスペースの奪い合いになっているような議会だよりに限って「これでもか!」といわんばかりに文字数が多いものです。しかも、内容が薄い。議会だよりで全部書き尽くすのではなく、「会議録やウェブサイトで詳しくは見てもらう」ということだっていいのだと思います。
2つ目は、「住民」に参加してもらうことです。住民が意見や質問をするコーナーもいいでしょう。表紙を飾る写真を住民から募集するのも「あり」です。次回の議会報告会の質問事項などを書いてファクスできるような仕組みにしておくのもグッドアイデアです。
3つ目は、この間の議会の活動全体が見渡せるような記事にすることです。一般質問や代表質問ばかりに大きく焦点を当てた紙面は、「口元だけアップになったポートレート」みたいなものです。いくら魅力ある口元でも、見ている方にはその魅力は伝わりません。議会トピック、定例会全体の流れ、委員会ごとの審議、議会報告会、閉会中の活動などの中で伝えることが大事でしょう。「編集のテクニック」を議会や事務局が学ぶことも大切ですが、こうしたことが実現した後で十分です。
実務の輝き
今述べたことが当たり前のようにできている議会もあります。山梨県の昭和町議会がそれです。一見、手づくり感あふれる普通の議会だよりのようですが、ページをめくると、2011年町村議会広報全国コンクールで最優秀賞を受賞した理由が分かります。例えば、最新号(2014年10月22日163号)では、議会防災訓練の実施にちなんで、トップページに災害時の指定集合地の地図が掲載されています。これには住民誰もが関心を示すに違いありません。一般質問に執行部がどう対応したかを追跡調査する「追跡」のコーナーも有名ですが、昭和町議会の真骨頂は住民参加です。表紙は、毎回、心温まる住民の写真(事務局職員が撮影)ですし、紙面上で議会クイズを出しており、正解者5名には景品(図書カード)も出します。井戸端会議(議会報告会の発展形)の報告も実に丁寧です。極め付きは最終ページ、そこは「昭和町に住んでみて」という住民エッセイになっています。こうした紙面づくりは議員が編集に積極的に関わりつつ、自然にでき上がったというのですから、頭が下がります。昭和町議会が従来型の議会だよりの到達点だとすると、未来型の議会だよりの可能性を示してくれるのが大津市議会のそれです。例えば、一般質問なら、各議員の主な質問の項目を示した上で、そのページの欄外に「クリック to リンク」と名付けて、ウェブサイトの該当ページの探し方を示しています。また、市議会のウェブサイト上に、PDFファイルだけでなく「デジタルブック形式」での議会だよりも掲載しています。ページをめくる感覚で議会だよりを見ることができ、検索にも便利です。
議会だよりを発行するには一定の手間とコストが必要です。これを効果的に使って住民との距離を縮める努力は議会が最初にするべき議会改革のひとつかもしれないのです。