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2014.09.10 仕事術

データプレゼン入門 政策をつくる人のためのデータで伝える技術 第2回 統計データはどこにあるか

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どんな統計データがあるか

 今回はプレゼンの原となる統計データそのものがどこにあるか、どのように入手するか、また、どう利用するか、について触れましょう。本誌の読者層を考慮して、市町村別のデータに焦点を当てることにします。
 全国一律の基準で調べられていて、他の市町村と比較可能な市町村別統計データのうち主要なものを表1に掲げました。
 統計調査には、調査統計と業務統計があります。住民の身長と体重を調べるため、自治体が行っている健康診断の際に測定した結果を集計したとしましょう。これは業務統計です。本来の行政目的から副産物的に得られたデータを「業務統計」といい、そうではなくて、データを得ることを目的とした調査を「調査統計」といいます。付け加えて言及しておくと、GDP統計など複数の統計を組み合わせて作成される統計は「加工統計」と呼ばれます。
 犯罪統計が典型的な業務統計です。警察は犯罪人の認知、検挙という本来の業務から派生的に犯罪認知件数や検挙人数を把握することになります。この場合、警察庁が全国の警察署で業務統計をとる際の統一的な犯罪分類やカウントのタイミング、集計表のフォーマットなどの基準を徹底していますので、地域ごとに犯罪件数が比較できることになります。
 市町村自治体は様々な業務統計を作成していますが、省庁が全国的な統一基準を作成し、市町村に義務付けていない場合もあり、その場合は、市町村相互には単純に比較できないので注意が必要です。例えば、自治体が自ら管理している街路樹や花壇の数の統計を作成している場合、どの自治体でもその統計を必ず作成しているとはいえず、またどのくらいの大きさのものまでカウントするかの基準もないでしょう。したがって、時系列変化などその自治体にとっては大切なデータとなっているかもしれませんが、他市町村と人口当たりの数を単純に比較したりはできないのです。
 また、業務統計はバイアス(偏り)がかかりやすいので注意が必要です。上で述べた健康診断の結果から住民の身長・体重を集計した結果は、会社で健康診断をする人や健康診断をそもそも忌避している人を除いたデータになります。したがって、対象者が女性に偏ったり、むしろ健康者に偏ったりしている可能性もあることから、住民全体を代表するデータにはなりません。調査統計では、調査対象集団(母集団)から無作為に抽出した者に対して調査を行うことから、こうしたバイアスがかからないので信頼が置けます。身長・体重については、厚生労働省が行っている国民健康・栄養調査という調査統計の中で調査されており、信頼が置けるデータとなっています。
 また、業務統計には、データ改ざんのおそれもあります。この7月末に大阪府警で全国ワースト1の地位を避けるため、すぐに自転車が見つかった自転車盗を省いたりして、管内の街頭犯罪の件数を過少報告したことが明らかとなり、関係した幹部が処分されました。配下の大名からの石高の自己申告による業務統計が信用できないため、秀吉は、太閤検地という調査統計を強行したのです。
 表1に掲げた統計は、調査統計も業務統計もありますが、全て省庁によって基準が設けられており、それに従って作成されているので信頼が置けるデータといえます。したがって、他の類似した町村との比較も十分可能です。
 ただし、観光統計だけは、同じ地域の異なった観光施設に訪れるといった場合の観光流動のダブルカウントをどう回避するか、また地元民がほとんどの盆踊り客まで対象とするかなど、基準の統一が難しいため、自治体独自の基準でデータがとられており、かつ同じ基準で毎年調査されているため時系列変化は追えても、他地域と観光客数規模を比較することはできない場合が多いので注意が必要です(観光庁が統一基準の観光統計の作成を都道府県に指示して開始していますが、市町村別データは公表されていません)。

表1:市町村データが得られる主な統計データ一覧表1:市町村データが得られる主な統計データ一覧

 なお、統計データのうち、市町村別のデータが得られる統計は、全数調査の調査統計か、市町村単位までのデータが必要な業務統計に限られます。
 調査統計には、国勢調査や経済センサスといった世帯や事業所などの調査対象を全て調べる「全数調査」と、全体を代表するような一部のサンプル的な調査対象に対して失業率などを調べている労働力調査、あるいは家計収支を調べている家計調査などの「標本調査」とがあり、件数的には、標本調査が圧倒的に多くなっています。
 標本調査の場合は、サンプル数の制約により、せいぜい都道府県別のデータが得られるのみであり、市町村別のデータは得られません。
 国勢調査のような全数調査は、標本調査のサンプリングの基礎としての役割を果たすとともに、市町村やそれより狭い調査区などの区分の集計結果や性・年齢・学歴・地域など多重クロスの集計結果が得られるため、統計調査の全体体系の中でも扇の要となる重要性を有しています。
 ただし、全数調査は、大変なコストや国民負担を要しますので、しょっちゅう行うというわけにはいきません。そこで、毎月の失業率データがすばやく必要な労働力調査は、国勢調査の調査区を基礎にした無作為抽出による標本調査として実施されているのです。このため、市町村別の失業率データは、5年に1度の国勢調査の結果としてだけ得られることになります。町村部の雇用情勢のデータとしては、これをベンチマークに据えながら、最寄りのハローワーク管内の業務統計である有効求人倍率の月次データの動きで判断していくことになります。
 もうひとつ統計調査について知っておくべきことは、統計法上の位置付けの違いです。調査統計であれ、業務統計であれ、国や地方公共団体がまとめる統計を公的統計といいますが、公的統計のうちでも重要なものは、総務大臣によって「基幹統計」に指定されています(統計法の改正前は「指定統計」と呼ばれていました)。
 統計法は、基幹統計について、報告(回答)を求められた者が、報告を拒んだり虚偽の報告をしたりすることを禁止しており(13条2項)、これらに違反した者に対して、50万円以下の罰金が定められています(61条)。国勢調査の人口数を水増しするなどといった実際にもあった統計担当公務員の違法行為には、さらに重たい刑が科せられています。犯罪統計は基幹統計に指定されていませんから、上に触れた大阪府警のデータ改ざんは警察内の処分にとどまっています。こうした強制措置を持つ基幹統計は、他方で、結果データについて国民への公表が政府に対して義務付けられています。

統計調査の分類の3つのポイント
1.調査統計業務統計か
2.全数調査標本調査か
3.基幹統計かそうでないか

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